第11章 むすびのいちばん
そして――。
「よし。これで行こう。勘助、決まったぞ」
「左様でございますか」
勘助さんがおざなりに返す。
あれから2時間も待ちぼうけを食らったら、それも仕方ないけど。
「先鋒は梅。酸味が肝要だ」
「左様で」
「中堅は味噌。湯でふやかせば即席の雑炊になる」
「左様で」
「大将は塩だ。香の物と迷ったが、塩が無ければ話しにならないからな」
「塩止めには難儀させられましたからな」
「あぁ……。あれは本当に参った…」
項垂(うなだ)れてるお二人的には謙信さま様々なんだな。
それにしても……
具に香の物って、少し奇抜すぎないかな?
まぁ、何にせよ、と信玄さまが口を開いた。
「布陣は完璧だ。これ以上の配置はない」
「左様で」
「……?」
ニンマリする信玄さまと、たぶんやれやれと思っている勘助さん。屋根裏=ここ=からじゃ表情まで分からないけど。
一体、そんなことを決めてどうするつもりなんだろう?
――本日の信玄さま――
いくら好きでも、あんこは無いな……