第3章 ひこうしきかいだん
「佐助。信玄はどこへ行った」
戻るなり、謙信さまが現れた。眉間のシワ、まだ取れないのか。
「信玄さまなら、『ひこうしきかいだん』に出掛けました」
「非公式?相手は誰だ」
「さぁ……。ひこうしきなので分かりません」
「…………」
佐助の答えに、さらにシワを深くした謙信さまは、そのままプイと部屋へ戻っていった。
「…ひこうしきってお前な」
「軟派(ナンパ)なんだから、非・硬式」
「変な言葉、あんまり教えんなよな」
「てへぺろ」
その後、雨が上がった頃に帰ってきた信玄さまは、やっぱり軟派で引っ掛けた女と、楽しく飲んできたらしい。
何が『非硬式会談』だ。まったく。
――本日の信玄さま――
軟派の反対は硬派。