第8章 壁外調査
全身が殺意に駆られているのに対し、頭の片隅は冷静だったのか。
真っ先に頸を切り裂き、その肉塊を蹴り飛ばす。
その後は、我を忘れたように死んだ巨人を攻撃し続けた。
肌が焼けるような蒸気を浴びるのも厭わず、ただひたすら攻撃し続けた。
「…やめろ、ソフィア、っ。」
「よくもっ、よくもアランをっ…!」
「ソフィア、俺は生きてる。」
「お前なんて殺してやる…!殺してやる!」
「ソフィア、やめるんだ…っ!」
後ろから誰かに抱きしめられ、右手を掴まれる。
「…ソフィア、そいつはもう死んでる。」
アランだ。
アランが生きてる。
耳元で聞こえる温かく優しい声に、
煮えたぎっていた想いがスゥッと引いていく。
そのまま腕を引かれ、巨人から距離を取る。
すると、体の向きを変えられ、正面から抱き寄せられる。
アランから伝わる体温、息遣い、心臓の音。
それらを感じた瞬間、無意識に涙が零れ落ちる。
「アラン、…っ、良かった。生きてて、良かった…っ。」
「あぁ、ソフィアのお陰だ。ありがとう。」
アランの大きな手が頭に添えられ、優しく髪を撫でられる。
その温かさに身体を預けて、少し休みたかったが、リヴァイ兵長の冷静な声がそれを許さなかった。