第5章 調査兵団入団式
いつから自分は一人の女性に一喜一憂するような単純な男になったのか。
「団長?」
それは分からなかったが、一つ感じたのは一人の女に振り回されるのもあまり悪くはないということ。
「いや、すまない。君があまりにも真っ直ぐだから、少し戸惑ってしまった。…君は本当に私を喜ばせるのが得意のようだ。」
「そ、そんな、本当のことを言っただけで。」
「それが嬉しいんだよ。…まぁ、とにかく他の男にあのような顔は見せないようにしてくれ。色々と勘違いされてしまうからな。」
「ハッ、団長の仰せのままに。」
自分の命令にどこまでも従順な少女は、自分に向かって敬礼をする。
エルヴィンはそれが嬉しくもあり、少し悲しかった。
自分に命でさえも預けられる嬉しさ、それに対してただの上官と部下という距離の悲しさ。
エルヴィンはどうしようもないもどかしさに襲われたが、今はそっとしておくことにした。
「時間を取らせてしまってすまなかった。訓練を続けてくれ。」
「あ、あのっ、」
エルヴィンがソフィアの元を去ろうとした時、ソフィアが控えめにエルヴィンを呼び止める。