第5章 調査兵団入団式
ソフィアはというとエルヴィンの言っていたことに驚いていた。
自分で言って悲しくなるが、私は誰にでも気を許すようなできた人間ではない。
だが、エルヴィンの前では無意識のうちにそんな表情をしていたのか。
まだ顔を合わせたのも二度目なのに、彼から与えられる安心感は何だろう。
ソフィアは自分に問いかける。
それはきっと憧れだ。
強靭な肉体、明晰な頭脳、そして兵士達を導く圧倒的な統率力。
自分はそんな偉大な人に心臓を捧げている。
それは誇り以外の何者でもなかった。
「エルヴィン団長。本来、私はそんなに表情の豊かな方でも無防備な方でもありません。その証拠に、私自身もまだ戸惑っています。」
「何に対してだ。」
「団長にそのような顔を見せたことに対してです。自分でも不思議で仕方ありません。…でも、あなたに触れられることがとても嬉しい。それじゃいけませんか?」
エルヴィンの目をじっと見つめる。
エルヴィンはそんな視線を受けると、先ほどの表情とは打って変わって、再び眉を困ったように下げる。
さっきまで醜い感情を抱いていたはずなのに、この少女の言葉でその感情がスゥッと無くなっていくのを感じる。