第5章 調査兵団入団式
「…随分と無防備なんだな。」
エルヴィンが低い声で呟く。
この時、エルヴィンの中に湧き上がってきたのは嫉妬だった。
この少女は頭を撫でさせろと言われれば、誰にでも頭を差し出すのだろうか。
そして、こんなにも安心したような表情を浮かべるのだろうか。
普段なら抑えることができる感情も、ソフィアを前にするとその役割を忘れてしまったかのように溢れてゆく。
「…えっ?」
普段のエルヴィンからは想像できない声色にソフィアは戸惑った。
「君は誰にでもそんな表情をするのか?」
「質問の意味が…、」
「君は誰にでも、そんな勘違いさせてしまうような表情をするのかと聞いている。」
こんな聞き方、まるで尋問だ。
このままではソフィアに恐れられてしまう。
いつもの自分を取り戻せ。
心の中でそう呟くが、理性はそう簡単に働いてはくれなかった。
「どうなんだ、ソフィア。」
滑らかな頬に手を添え、ソフィアを問い詰める。