第4章 出会い
エルヴィンの口から語られたのは、耳を塞ぎたくなるような事実だった。
最初の壁外遠征で5割の新兵が死亡する。
そしてそれを超えた者が生存率の高い優秀な兵士へとなってゆくのだ。
「この惨状を知った上で、自分の命を賭してもやるという者はこの場に残ってくれ。」
エルヴィンは何も隠そうとはしなかった。
その事実は新兵達を驚かせ、また恐怖に陥れた。
冷や汗をかく者、足が竦み出す者、涙を流す者。
その反応は様々だ。
その中で泣くでもなく、笑うでもなく、ただ純粋にエルヴィンを見つめる少女がいた。
まるで異質だった。
エルヴィンはその少女に強い興味を覚えることになる。
だが、そんな態度はおくびにも出さずに話を続ける。
「自分に聞いてみてくれ。人類のために心臓を捧げることができるのかを。」
ゴクリと唾を飲む音が聞こえる。
エルヴィンはもう一度新兵達をグルリと見渡すと、正面に向き直り口を開く。
「以上だ。他の兵団の志願者は解散したまえ。」
そう静かに告げられる。
途端にザッザッと砂利を踏む音が聞こえ、新兵の殆どが解散していく。
その間もソフィアはエルヴィンをじっと見つめていた。