第7章 初めてのお味は…
「お前に貸しがひとつ出来たな。」
「ほんとにそうです…でも、それは今度きちんとお返しさせてもらいますので!」
「ハッ、冗談だ。別にこれくらいのことならいくらでもしてやる。あぁ、もう酒絡みは勘弁だがな。」
「そ、それは肝に銘じておきます…!」
二人の間の空気は妙なものから一転、いつものようにたわいもない話ができるくらいに戻っていた。
「あ…じゃあ、私はこれで失礼しますね!」
エマはもう一度リヴァイに軽く頭を下げてドアに向かうと、途中で彼を振り返った。
「兵長!」
「なんだ?」
「あの、さっきの質問に答えてなかったから言いますけど…私兵長といる時が1番居心地がいいです、だから良ければこれからもどうかお傍に置いてください!」
エマは胸の鼓動がまた早くなるのを感じながら早口で一気に喋ったが、喋り終わるとなんだか急に恥ずかしくなって下を向いてしまった。
その頭の上にポンと重みがのしかかる。
上を向くと、色白で整った顔があった。
白い手が、エマの頭を優しく撫でている。
「当たり前だ。お前のことは俺が責任を持つと決めているからな。エマ、これからも頼むぞ。」
リヴァイはあまり見せたことのないような穏やかな表情でだった。
そんな表情を目の当たりにして、エマは顔中にみるみる熱が集まってくるのを感じてしまっていた。
ただ穏やかな顔で宜しく頼むと言われただけなのに、なぜこうもいちいち反応してしまうのか…
さっきから自らの意志とは関係なく赤面したり、ドキドキしたりする自分にただただ困惑するばかりのエマなのであった。