第7章 初めてのお味は…
ベッドに一人取り残されたエマは考えていた。
忘れてくれ、なんて言われたけど忘れられる訳ない。
あんな兵長、今まで見たことなかった。
思い返すだけで心臓がバクバクする。
兵長は、私を怒るつもりであんなことをしたのだろうか。
分からない。
分からないけど…
「なんでこんなにドキドキするの…」
リヴァイのことは好きでも何とでもないと思い直していたのに、この胸の高鳴りは何なのだ。
それに、リヴァイが離れていった時に感じた少し寂しいと思ってしまった気持ちは…
もう一度ベッドへ横になると、自分を見下ろすさっきのリヴァイが目に浮かぶ。
サラサラした漆黒の髪、
それとは対象的な色白な肌、
逸らすことができなかった三百眼。
その姿を思い出すとまた心臓は鼓動を早め、意思とは裏腹に心はきゅんとしてしまう。
「!!」
兵長に嫌な思いをさせてしまったのに、私は何を考えているんだ…
エマはふと我に返ると、頭の中を一度リセットしようとかぶりを振った。
そしてベッドから起き上がって軽く身だしなみを整え、リヴァイが出てくるのをじっと待った。
とりあえず、兵長が戻ったら改めてきちんと謝罪と御礼を言って、もう自室に戻ろう…
まだ頭が少し痛いけど、もう一人でも大丈夫そうだ。
それからしばらくして浴室のドアが開くと、黒色の長袖と七分丈の緩いパンツを履いた寝間着姿らしいリヴァイが出てきた。
タオルがかかった髪からはまだ滴がしたたり落ちていて、黒色の衣服をポツポツと濡らしている。
エマはその姿に普段とまた違った雰囲気を感じ、ドキリと目を奪われてしまいそうになるが、なんとか平然を保って声をかけた。
「おかえりなさい。」
「あぁ。起き上がって大丈夫なのか?」
リヴァイからも先程のような変な雰囲気は感じられない。
「お陰様でだいぶ良くなりました。まだちょっと頭痛がするけど、もう大丈夫です!」
「そうか、ならよかった。」
「兵長、今日は本当にご迷惑をかけてすみませんでした。それと、ありがとうございました!」
エマはリヴァイに努めて明るく言うとペコっと頭を下げた。