第7章 初めてのお味は…
「いや、なんでもない。」
「え?!何ですか?」
「何でもねぇ、間違えた。」
…い、いやいやいや絶対何かある!はぐらかされてる!
泥酔中の記憶がないゆえにリヴァイの言いかけたことがとてつもなく気になって仕方がない。
「ほっ本当にですか?!言いにくいことだとしても私なんかに気を遣わず言ってください!」
エマが縋るように必死になってもう一度訴えると、黙って数秒見つめられたのち、なぜか大きなため息をつかれてしまった。
何…私そんなにいけないことしちゃったの…?
エマは固唾をのんで、隣のソファに腰掛けるリヴァイを見つめる。
盛大なため息のあとまた少しの沈黙を経て、ゆっくりと口を開いたリヴァイからは予想もしなかった言葉が出た。
「…俺は、いい気はしなかったがな。」
「……え?」
エマは目を見開いた。
リヴァイは若干苛立っているようにも見える。
「記憶を無くすほど酔ってやったことだから、不可抗力だったのは分かってる。」
「は、はい…」
「俺が止めようとする声も耳に入ってなかったようだしな。」
「すみません…」
「お前は酒に酔うと誰にでもああなっちまうのか?」
「え?えとそれは…分かりません…」
「なら、ミケには気を許してたってことか?」
「いえそれは…すみません、本当に何も覚えていなくて…」
一旦、自分の気持ちを表に出すと、心に留めていた感情が次々と溢れてしまう。
リヴァイは自分を止めることができなかった。
一方のエマは思いもよらないリヴァイの言葉に激しく動揺してしまい、質問にうまく答えることができない。
そしてその煮え切らない態度がまた、リヴァイの苛立ちを増長させてしまったのだった。
正直言って、ミケに擦り寄る姿を見せつけられたのは本当に面白くなかった。
酒の勢いとはいえ、いつも一緒にいる自分ではなく他の奴に行ったのがリヴァイとしてはすごく気に入らなかったのである。
そんなことで機嫌を損ねるなんて子供みたいだが、リヴァイは何故かうまく感情をコントロールすることができずにいたのだ。
自分は常に物事を冷静に考えることが得意だと思っていたのに、一体どうしてしまったのか。