第7章 初めてのお味は…
「ところで私、何で兵長の部屋に…?」
まだ状況がうまく飲み込めていないエマはリヴァイに尋ねた。
「まぁ分からないのも無理ねぇな。一体どこから記憶がないんだ?」
「えと…確かハンジさんのお酒を飲んだ所までは覚えてるんですけど…」
それからこの部屋で目覚めるまでの記憶は、すっぽり抜けてしまっている。
「やっぱりか…あの後、お前もハンジもエルヴィンも酩酊状態になってたから会は強制終了した。それでベロベロのお前を部屋まで送ろうとしたんだが、場所を聞く前に寝られちまって、仕方なくここに連れてきたってわけだが。」
「そ!そうだったんですか!すみません、多大なご迷惑を…」
一通りリヴァイから説明を聞くと、エマは心底申し訳なさそうに小さくなってしまう。
「あれは完全にハンジのせいだ。あいつは俺がキツく叱っておくから心配するな。でもまぁ…お前もこれで酒の怖さはよく分かっただろ。」
「はい…まさか記憶まで無くしちゃうなんて……あの、もう既に兵長にはご迷惑をおかけしてしまったんですが、皆さんにもご迷惑かけていなかったですかね…すみません、ちゃんと思い出せなくて。」
「まぁミケには詫びておけ。」
「私、ミケさんに何かしたんですか?!」
「ハッ、本当に何も覚えてないんだな。抱きついてあいつの匂いを嗅ぎまくってたぞ。」
「え…うそ……」
リヴァイが苦笑混じりにそこまで言うと、エマの顔からサーっと血の気が引いていく。
ミケさんの匂いを嗅ぐ?
しかも抱きついて…?
「嘘じゃねぇよ。」
リヴァイが真実だと言えば、エマの顔は更に強ばっていく。
あの場で初めて喋った相手にそんなことをしたなんて。
きっとミケさんは相当迷惑だったに違いない…
シラフなら絶対やろうとも思わないことでも、酒に呑まれるとこうも簡単にやってしまうのか。
恐ろしい、
アルコール、恐ろしすぎる。
「あ、明日朝一番でミケさんのところへ行ってきます…」
エマは今にも泣きそうな顔をしながら呟いた。
「ミケはそんなこと気にするような奴じゃない、そこまで気を落とすな。ただ…」
「……?」
リヴァイがそこまで言って会話を止めると、エマは不安そうな表情でリヴァイを見上げた。