第7章 初めてのお味は…
顔を近づけじっと見つめたままでいると、突如小さな声を漏らしたエマ。
焦ったリヴァイは、素早くベッドから降りて様子を伺った。
すると僅かに眉が動いた後、エマはゆっくりと瞼を開けた。
最初の数秒はぼーっと天井を見ていたが、そのうち横になったまま周りをぐるりと見回すと、ベッドの傍らに立つリヴァイと目が合う。
「……へい、ちょう…?」
「起きたか。気分はどうだ?」
リヴァイは平然とした様子で問いかけるが、自分のせいで起こしてしまったのではないかと内心落ち着かなかった。
「頭が痛いです…。」
「無理に起きなくていい。水を持ってきてやるからとりあえず飲んで横になっておけ。」
頭をさすりながら起き上がろうとするのを制止すると、エマはすみません、と言いながら再びベッドに横になる。
どうやらさっきのことは気付かれてなさそうだ。
それはよかったのだが、エマのテンションは眠る前と比べてだいぶ落ち着いているようで、リヴァイは少しだけそれを残念に思っていた。
できればもう少しだけ、普段とは違ったエマを見ていたかった…と思ってしまったのだ。
エマはリヴァイからもらった水を一気に飲み干すと、まだ気分が悪いようで再び横になった。
「兵長…あの、ありがとうございます。」
「気にするな。気分が良くなるまでここに居ていい。」
顔をこちらへ向けて申し訳なさそうに礼を言うエマに、リヴァイは静かに言葉をかけた。
エマへの気遣いもあるが、できればエマともう少し二人きりでいたいと思ってしまったのも事実。
だがそれは決して彼女には見せないよう、リヴァイは至って冷静に声をかけたのだった。
「ありがとうございます…じゃあもう少しだけ…」
一方のエマはその言葉に隠されたリヴァの気持ちなどつゆ知らず、ただ怒ったりしていないことが分かるとほっと胸を撫で下ろしていたのであった。