第7章 初めてのお味は…
リヴァイはエマを抱き抱えたまま器用にドアを開け部屋に入ると、彼女を起こさぬようそっとベッドへとおろした。
エマの部屋が分からないうえ、こんな夜中に他に寝かせる場所も思い当たらなかったため、リヴァイは仕方なく自室に連れて来たのである。
エマを自室に入れるのはこれで三度目だ。
まぁ、一度目は知らぬ間にいきなり入って来られたのだが。
そんなことを考えながら横たわる姿に目をやると、相変わらず規則正しい寝息を立てている。
「…呑気な奴だな。」
呆れ気味に呟きながら、その寝顔を見つめる。
閉じられた瞳の下に影を落とす長い睫毛。
アルコールのせいで紅潮した頬。
微かに開かれた血色の良い小さな唇。
「………」
自分よりだいぶ歳下なはずなのに、リヴァイは何故だかその姿に言い知れぬ色気を感じてしまっていた。
初めて出会った日、エマは同じようにこのベッドで眠っていたが、その時はそんなことは思わなかったはずだ。
まぁあの時は特殊な状況だったから、そんな思考にならなかったと言えばそれでおしまいなのだが…
…………
それに比べて今の俺はなんだ。
エマを見ていると、身体の奥から熱を持ちだして、むず痒いような感覚に陥りそうになる。
端的に言えば、彼女に触れたいと思ってしまいそうなのだ。
こう思うのも全てアルコールのせいにしたかったのだが、実を言うとリヴァイはそれほど酔ってもいない。
思考はいたってクリアである。だから厄介なのだ。
リヴァイは自分の中に小さく渦巻き出した欲求と格闘していた。
少しなら触れてみてもいいだろうか?
いや、でももし起こしてしまったら…
変に勘違いされてまた気まずくなってしまうのだけは避けたい。
だからと言って、このまま朝まで自分をセーブし続けられる自信があるとも言い切れない…
リヴァイは頭の中で葛藤を繰り広げるが、心底でうごめくエマへの欲に徐々に支配されて行くのを止めることができなくなっていった。