第39章 時をかける
「その前にお前の誕生日だな。」
「何にもいらないですよ。ただ一緒にいられるだけで十分です。」
「おいおい、俺と言ってること変わらねぇじゃねぇか。」
「あ!ホントだ…フフッ」
静かに笑うリヴァイの横で、エマは堪えきれず肩を震わせた。
蓋を開けてみたら互いの望みは至ってシンプルで、別に特別なことは何もいらなかった。
それが分かると、張り切って何かしようと必死になっていたさっきの自分がなんだか可笑しく思えてしまったのだ。
「だが祝う側からしたらそうもいかねぇ。」
「ですよね。でも本当に私は何も……?リヴァイさん?」
それでも、やっぱり何も特別なことなんていらないと念を押そうとしたエマだったが、その途中で口を噤んだ。
リヴァイが突然神妙な面持ちになったからだ。
「……どうしたんです?」
エマは少し待ってから様子を伺った。
リヴァイはゆっくりこっちを向く。何かを決意したような顔をして。
「お前の誕生祝いはもう決めてある。」
「え?もう?」
「あぁ。だがそれを渡すには、さすがに当日まで秘密にしておくわけにはいかねぇ。」
「…ん?」
リヴァイの言っている意味がよく分からない。
当日まで秘密にしておけないプレゼント?しかも今そんな話をするなんて、どういうことなんだろう?
疑問符を並べながら彼の発言の意味を探っていると、リヴァイは細い瞳を少しだけ開いて、閃いたような顔をした。
「…そういえば今日はクリスマスだったな。」
「?そうですね」
「ならちょうどいい。これは俺からのクリスマスプレゼントにする。」
「あの…さっきから言ってる意味が……」
困惑を誤魔化すように髪を触るエマの手を、リヴァイは掴んだ。
その手を静かに下ろしエマの膝に置く。もう片方も同様にして、両手で包んだ。横並びのまま体だけ少し向かい合った。
「リヴァイさん?」
「エマ」
握られた手にきゅっと力がこもった。
いつものように名前を呼ばれる。けれどまるで初めて呼ばれた時のように心臓が跳ねたのは、呼んだ側のただならぬ緊張が伝わったからだ。