第39章 時をかける
「リヴァイさん。お誕生日、おめでとうございます。」
エマは改めて、リヴァイに祝いの言葉をかけた。
「ありがとな」
「やっと落ち着いて言えた。日付変わる前に伝えられて良かったです。」
スマホを覗くとあと10分足らずで日をまたごうとしているところだった。ギリギリセーフだ。
「あいつらに会ってバタバタしてたからな。」
「ふふ、そうですね。あ!皆でリヴァイさんのことお祝いすればよかった!あーなんでそこまで頭回らなかったんだろ…」
エマは完全にしまったと思った。
どうせなら皆で祝った方がリヴァイももっと喜んだだろうに。
それにこんなギリギリになってやっとプレゼントを渡して祝うだなんて、ちょっといい加減過ぎないかと思ったのだ。
せっかく初めて祝うリヴァイの誕生日だというのに、色々と準備不足なのが否めない。ついに後悔が渦を巻き始めた。
そして一度そう考えはじめてしまうともう止まらない。
「あの会はお前のために用意したようなもんだ。だから俺のことは別にいい。」
「でも…」
しゅんと下を向くエマの頭に掌が乗る。
顔をあげれば優しい瞳が見つめていた。
「お前に祝って貰えただけで十分だ。むしろ一緒にいれるだけでいい。」
「う…リヴァイさん…」
逆に慰められて泣きそうになってしまう。
でも後悔したってもう過ぎてしまった時間は戻らない。
だったら、
「じゃあ…来年はとびきりお祝いさせてくださいね。」
「あぁ、分かった。」
掌がクシャッとエマの頭を撫でた。
リヴァイの優しさがエマの胸を少しずつ温める。
次第にもっと寄り添いたくなって、リヴァイの肩にコテンと頭を預けてみた。
瞳だけを動かし上を見れば、三白眼と視線が交わる。
一見キツい印象のその目元も、ちゃんと見れば感情の変化がよく映っていることをエマは知っている。
そして今、彼が何を思いながら自分を見てくれているのかも何となく分かる。
それだけでエマの胸は一気に熱く焦がれて、好きな気持ちが溢れだしそうだ。