第39章 時をかける
等間隔に並ぶ街路樹には淡雪を模したLEDライトが飾られている。
ずらりと先の方まで立ち並ぶそれは、都会ならではの四季を感じる景色だ。
夜も深くなりつつある今、歩道を歩く人は大半が恋人同士で、その中にポツポツと残業帰りのサラリーマンがいるくらい。
皆思い思いに特別な日を過ごしている。
自分もそうだ。エマと過ごせてよかった。
誰かのものになってしまわなくて本当によかった。
雑踏に紛れて名を呼ぶ声がする。
顔を見ると恋人は目尻を下げ柔く笑っていた。
「色々あったけど、私今、これ以上ないくらい幸せです。」
言葉を噛み締めるエマを見て、リヴァイの胸に熱いものが込み上げた。
手を繋ぐ。絡まった指と合わさった手のひらはポケットで温まっていた自分のよりだいぶ冷たい。
その手を引き、リヴァイは歩く速度を上げた。
「まだだ」
「え?何が…っ?!リヴァイさん?!」
歩幅は大きくスピードを上げて、ノロノロ歩くカップルを追い越していく。
突然引っ張られたエマは後ろで驚いているようだけど、構わず。
リヴァイはチラと時計を確認した。
大丈夫だ、まだ間に合う。
少し歩き駅に着いた。
改札を通り抜け、自宅とは反対方向のホームに向かったところで再びエマから質問が飛んだ。
「どこ行くんですか?!こっちは家じゃな」
「行きたいところがある。少し付き合え」
「今からですか?!」
「お前だって俺に会社サボらせて連れてっただろ。」
「そ、そうでした…でもあの、どこ行くかぐらい教えてくれても、」
その時ちょうど電車が到着した。
「行けばわかる。」
動揺するエマの手をしっかり握り直し、電車に飛び乗った。
*
三度の乗り換えを経て電車に揺られること一時間。
駅から10分ほど南へ下りると、辺りは遮るものの何もない海へ辿り着く。
二人は浜辺に落ちている古木に並んで座った。
満ちた月の明かりが地平線を黒く浮かび上がらせ、月の足元の水面だけを白く照らしている。水面に伸びるのは光の道。
波がたつ度にその道はぐらぐら揺れて、上を歩くにはとても不安定そうだ。