第39章 時をかける
「まったくお前ら好き勝手話進めやがって。エマの意見もあるだろうが。」
「え…?!それって私の意見次第では…」
「少なくとも私は歓迎するよ。」
「だがお前はたぶん行くとは言わねぇだろ、エマ。」
笑顔で片手を差し出す酔っぱらいエルヴィンを払い除けて、リヴァイはエマに訊ねた。
確かに皆がいる会社で働けたら、それはすごくすごく楽しそうだけど…
「皆さんとは、プライベートで会えるだけで十分嬉しいです。」
それにいくら昔のよしみだったとしても、コネで途中入社するのはなんとなく気が引けたりもする。と真面目に考えてみたり。
「それは残念だ。半分以上本気だったんだがな。」
「そんな風に言ってもらえて嬉しいです、ありがとうございます!」
エマを迎えての席は大いに盛り上がり、縁もたけなわとなったところでお開きとなった。
あの頃の思い出話をしたり、近況を教え合ったり、エマにとっても再会した仲間にとっても本当に楽しい時間となった。
*
夜も深くなり、外へ出れば容赦のない寒さが出迎える。でも酒で火照った体にはこれくらいがちょうどいいとリヴァイは思った。
「次は新年会だってハンジさん張り切ってましたね。」
「2月はバレンタイン会だとか言ってやがったな…あいつ毎月やるつもりか。」
「フフ、いいじゃないですか、毎月でも。」
エマは満足そうに笑う。
よかった、どうやらサプライズは成功したようだ。
「嬉しいです。皆と次の約束ができるの。」
「そうだな」
エマの一言で、リヴァイは彼女の気持ちを察したように頷く。
そして自分もまだまだエマと共にこの先も生きていける喜びを感じる。
エマと付き合うことになってから3ヶ月。
平日も休日も時間があれば逢っていた。逢えなかった長い長い空白の時間を取り戻すかのように。
それはお世辞にも30を過ぎた大人がするような恋愛とはいえない。まるで付き合いたての浮かれた学生のようなノリでもあった。
でも自分たちにはそれだけの時間が必要だったのだ。この先ずっと一緒にいれると分かっていても、それだけじゃ足りなかった。
すぐ隣で愛しい人の温度を感じることができる。それは奇跡。
その奇跡を一分一秒でも長く噛み締めたかった。