第39章 時をかける
話を聞いていると、どうやらリヴァイはエマを気遣って会わせるのを躊躇っていたのもあるが、ちょっとしたサプライズにしたかったことも分かった。
その思惑を他の皆も知っていたようで、だから今まで個別に連絡したり会いに来たりを我慢していたらしい。
リヴァイがそんな風に考えていてくれたなんてちょっと意外だったけれど、嬉しくもあった。
それにしてもエマはいつまでも夢心地だった。フワフワしてやっぱりそこまで現実味がない。
しかし、もう一生会えないと思っていた人たちと再会できたことに喜びを隠せないのは確かだ。
しかも皆揃いも揃ってあの頃のことを覚えているなんて、もうそれはどう考えたって奇跡としか言いようがない。
エマはあの世界を発つ前に、皆が開いてくれた誕生日パーティのことを思い出していた。
あの時も楽しかったけれど、根底にはやはり寂しさがあった。エマにも周りの皆にも。
まだここにいたいのに、いてほしいのに、別れなくてはならない辛さがあったから。
でも今はそうじゃない。
今日が終わりではなく、始まりなのだから。
大好きな仲間と未来を語れることは、とても素晴らしかった。
「エマさぁ うちの会社に転職しなよー!君なら人足りてようがなんだろうが、エルヴィンは即採用してくれると思うよ?!」
「いやぁ、それはさすがに」
「確か総務部の子が来年度寿退社の予定だから空きがでますよ?」
「モブリットさんまで!」
「それかまた兵長の秘書でもやるか?!あ、でも営業課長に秘書はつけられねぇか…」
「オルオ、だからその呼び方!課長にまた怒られるわよ!」
「なら私の秘書になってくれるか?そういうのを側に置かない主義なんだが、エマが来てくれるなら話は別だよ。」
「エルヴィン団、じゃなくてエルヴィンさんまで…」
「コイツの秘書だけは断固として許さねぇ。」
爽やかな笑みを携えてエマの手を両手で包むエルヴィンを、リヴァイは秒で引き剥がしギロリと睨んだ。
しかしエルヴィンは気にしないで笑っている。頬がだいぶ赤い。完全に酔っぱらいの絡みだった。