第39章 時をかける
「他に誰か来るんですか?」
「あぁ」
「そうだったんですか…」
「なんだ、嫌か?」
嫌、ではないけれど。
てっきり今日はリヴァイさんと二人きりで会うとばかり思ってたから、ちょっとがっかり…というか。
だってクリスマスだしリヴァイさんの誕生日だし、普通は二人きりで過ごすと思うじゃない…?
そんな本音を心の中でボヤきつつ、エマは答えた。
「嫌じゃないですよ?でも会わせたい人って誰なんですか?私の知ってる人?」
「たぶんな」
曖昧な回答にエマの頭の中の疑問符はさらに増える。
わざわざこんな日に会わせたいだなんて、一体誰なんだ?
自分にとってよほど重要な人なのだろうか?どうしても今日じゃないとダメだったのだろうか?
…やっぱりちょっと嫌だと思ってしまった。
さっきよりあからさまにテンションが落ちたエマの頭にポンと手が乗る。
「まぁ行けば分かる。」
対してリヴァイはどことなく楽しげだった。ワクワクしているというか…そんな感じだ。
ますます訳が分からず、でももう約束してあるなら仕方がない。
だから今日はお店も任せてほしいと言ったのかと思いつつ、エマはリヴァイについていった。
着いたのはビルの1階にあるイタリアンバル。
外観は一見可愛らしいカフェのようにも見えるが、中に入るとカウンター席がずらりと並び、席の上の棚にはワインやらが所狭しと置かれている。
平日の中日だがクリスマス、さらには年末というのもあって店内は結構混雑していた。
でもガチャガチャした若者は少なく、落ち着いた内観も相まって、雰囲気はそこまで悪くない。
リヴァイが店員に予約の旨を告げると店の一番奥にある半個室に通される。
エマはリヴァイの背をちょこちょこと追った。
「おっ!来たきた!」
「お疲れ様」
「おつかれっす!」
席はかなり騒がしい。どうやらもう集まっているようだ。にしても会わせたい人って、何人もいたのか?
通路が狭いせいで、リヴァイの背中が邪魔して個室の様子が覗けない。
背伸びして覗き込めば見えるんだろうけど、初対面だしさすがにそこまではしにくかった。