第39章 時をかける
濃密で甘い口付けはエマをあっという間に内側から溶かしていく。
こんなキスは本当に久しぶりだった。
腕や脚をもつれ合わせながら無我夢中でいると、名残惜しそうに舌が引き抜かれていく。
エマは2人を繋ぎ合わせる透明な糸の先に、悩ましげな顔を見た。
「……抱きてぇ」
絞り出されるように語られた本音を聞き、エマは合点がいった。
さっきからずっとこのことで葛藤していたのかと。
「それで様子が変だったんですか?」
「…いきなり迫るのもどうかと思うだろ」
フイ、と顔を背けてぶっきらぼうに言うリヴァイを見てエマは驚いた。
意外だ。今までのリヴァイだったら勢いに任せて事に及ぶだろうに。
「なんだかリヴァイさんらしくないですね…昔はもっと強引だった気がしますよ?」
「そこは紳士だと言え。成り行きとはいえ一応気にするだろ…だがその余裕っぷりを見るかぎり気遣いは不要だったらしいな。」
「…当たり前じゃないですか。」
壁の方を見つめたまま誤魔化すように髪をかきあげるリヴァイの腕を、エマは掴んだ。
こちらを向いた瞳を捉え、じっと見つめる。
「…抱いてください。」
リヴァイは目をぱちぱちさせている。発言によほど驚いたのか、少しの間が空く。
エマは掴んだ腕と後頭部を引き寄せ唇を奪った。
焦れったい。早くまた、あなたの女にしてほしいの。
一瞬 躊躇ったもののすぐに舌は絡められた。
それはエマを情欲の沼に沈めるような本気のキスだった。
リヴァイをホールドしていたはずの両手は畳に押さえつけられ、あれよあれよという間に向こうのペースに持っていかれる。
「…ん、あ」
「お前の同意は取れた…もう遠慮はしない。」
「うん…いい。早く、一緒になろ?」
「ハッ、煽りやがって。…後で後悔するなよ。」
「後悔なんてしなんんっ、」
言いかけた言葉はリヴァイに飲み込まれ、与えられる悦に溺れていく。
入り乱れる呼吸。重なる熱。
そして生まれる幸福。
何年も経て肌を重ね 確かめ合った互いの存在は、驚くほど尊く愛おしい。
ふたりはその存在を、温もりを噛み締めるように、深く深く愛しあった。