第39章 時をかける
「…エマ。俺は生涯お前だけだ。お前を失ったあの日からずっと。どんな姿になったって、お前を愛し、探して求めた。」
花になった日も、鳥になった日も、風になった日も、月になった日も。
「だから離さねぇ…もう絶対に。」
「うん……うん……」
キスをした唇をなぞり、その指をこめかみへと滑らせ後れ毛を耳にかけてやった。
エマは落ち着きを取り戻したが、頬は涙以外でも濡れてしまっている。髪も。そして自分もまた同じだ。
リヴァイはもう一度唇を寄せ、愛しい恋人の顔を見つめ愛を囁いた。
エマもリヴァイに同じだけの愛を伝える。
最後に柔く笑ったエマの目尻から、残った雫が一筋つたった。
その時向けられた笑顔を、リヴァイは世界で一番美しいと思った。
*
「洗濯機も乾燥機も貸してもらえてよかったですね!2時間くらいで乾くみたいです。」
「そうか」
あれからしばらく。
エマとリヴァイは浴衣姿で旅館の客室にいた。
びしょ濡れになった服のままでは電車にも乗れないし、ベタつく体もさっぱりできると急遽旅館に立ち寄ったのだ。
服は最悪乾けばいいと思っていたが、びしょびしょで訪れた二人を見た女将のはからいで洗濯までしてもらってしまった。
「…なんかこうしてるとあの時を思い出しますね、フフ。」
「そうだな」
エマが言う“あの時”とは、リヴァイが兵士だった頃の話だ。
逆トリップしてエマの世界で、一緒に温泉旅行をしたときの。
「あの時に泊まった宿とは違うけど、同じ温泉地にまたリヴァイさんと来られるなんて思ってもみませんでした。…というかそもそもリヴァイさんと一緒にいれることすら奇跡ですよね、ほんと。」
「そうだな」
「温泉は入っちゃったし、服乾くまで何します?近くお散歩とかしてみます?」
エマの気分は上々だった。
未だにフワフワしてはいるけれど、でも愛する人と奇跡の再会を果たし、こうしてまた一緒にいられるようになったのは紛れもない事実だから。
テンションが上がらないわけがない。
だが。
「リヴァイさん?」
なんだかリヴァイの様子がおかしい。