第39章 時をかける
「リヴァイさんと…もう一度一緒にいたいです。……ダメですか?」
瞬間、力強く引き込まれる体。
硬い胸に押しつけられ、ぎゅっと包み込むように腕が回った。
「ダメなわけねぇだろ…もう探すのも待つのもうんざりだ。」
「リヴァイ、さん…?!ひゃっ!!」
「っ?!!」
二人が抱きしめ合ったその時、まるでタイミング見計らったかのように大波が浜に打ち寄せた。
靴はもちろん膝までびっしょりだ。
「………」
「………」
しばし放心する二人。
顔を見合わせて下を見て、もう一度顔を見合わせて……エマはたまらず ぷっと吹き出してしまった。
「随分と派手に祝福してくれたな…」
「フフフ、ですね!……えいっ!!」
「っ?!おい待っ…!!」
バシャーン!!!
次の瞬間、派手にしぶきが飛び散った。
リヴァイは波打ち際に盛大な尻もちをつき、エマがその上に被さるようにして倒れ込んだのだ。
エマが無防備なリヴァイに勢いよく抱きついて、そのまま全体重をかけたせいだった。
咄嗟に後ろに肘をつき 体を支えたおかげで背中まで濡れるのは間逃れたが、どっちにしたって仕事用のスーツはびしょびしょ。
それはエマも同じで、二人が倒れた所にまた波が打ち寄せれば衣服は取り返しのつかないほどずぶ濡れになった。
「おいてめぇ何考えてやが…」
リヴァイは睨みをきかそうとした。が、瞬時にその目を丸くする。
さっきまで楽しそうな声を上げていたエマは、砂浜に両手をついたままボロボロと泣いていたのだ。
音もなく静かに流れる雫がリヴァイの胸に次々落ちて、まだ濡れていない部分に染みを作っていく。
「リヴァイさん…好き……好きです…!」
「てめぇそりゃあ…泣いてんのか笑ってんのかどっちだよ…」
リヴァイは困ったように眉を下げ、エマの頬を指で拭ってやった。
この海みたいに塩っぱいけれど、この海よりずっと透き通っていて、綺麗な涙。
泣き顔を晒して恥ずかしくなったのか俯いてしまったエマ。
リヴァイは体を起こし、両手でその頬を包み込むようにして正面を向かせた。
波打ち際に座り込む二つの影は重なり、砂浜に短く伸びる。
リヴァイはそっと、エマに口付けた。