第7章 初めてのお味は…
ゴクッゴクッ一
モブリットの制止も虚しく、ハンジの怪しい酒はエマの喉を通り抜けてしまった。
ハンジの凄まじい圧に押され、エマはまぁどうにかなるかと軽い気持ち半分で、グラスの酒を一気に口の中へ流し込んだのである。
………
なに…これ…
喉が焼けそう…
ハンジの持っていた酒は物凄くアルコール度数の高いものであった。
この酒は無類の酒好きである駐屯兵団のピクシス司令からハンジが貰った代物だったが、深酒すると酒癖が悪くなるハンジを懸念して、モブリットがこっそり隠していたのである。
おそらくショットグラスでちびちび飲むか、水で割ったりするものだが、既に結構酔っ払っていたハンジはその用法をまったく無視して、原液のままぐびぐびと飲んでいたらしい。
おそらくエルヴィンも酔ったハンジに無茶苦茶な飲み方をさせられたんだろう。
彼は眠ってしまったのか、天を仰いだまま固まってしまっていた。
「おい、大丈夫か?」
一口飲んだあと、下を向いて動かなくなったエマを隣のミケが心配そうな声で呼ぶ。
「………んふっ」
「?!」
「ミ…ミケしゃん………わたしも、ミケしゃんのにおいかいじゃってもいいですかぁ?」
エマは体をぶるっと震わせて不気味な笑い声を漏らしたかと思えば、そのまま隣のミケに抱きついてしまったのである。
「お、おい…?!」
「こうやって…スンスンスーンてくびのところをかぐのぉ?あはっ!おさけのにおいがする〜」
エマはミケの首元に顔を近づけながら上機嫌だ。
ミケは、“俺は何もやっていない”とでも主張するかのように、両手を大きく広げてエマの接触をできる限り避けようとしている。
普段、冷静沈着なミケでも彼女のあまりの豹変ぶりに動揺を隠しきれないようだ。
周りも、ハンジ以外はエマの突然の挙動に思わず動きを止めてしまっていた。
「おい、お前大丈…」
「おっきくてたくましいからだだぁ…ぎゅーっ!」
リヴァイが我に返り、エマの向かいからなんとか止めさせようと手を伸ばすが、エマは気づいていないのかミケに思いっきり抱きついたままだ。