第7章 初めてのお味は…
またグラス同士がぶつかる音がして、各々口へと運ぶ。
エマも皆と同じように、ドキドキしながらグラスに口を付けた。
ゴクッ一
「………」
「どう?どう!?」
「…あ、美味しい。」
冷えた酒は口内へ侵入し、喉を滑り落ちると胃から体内へと広がっていく。
少しの酸味と、ふわっと香る独特な香り。
これが大人の味というのか、今まで飲んだどの飲み物にも例えようがないその味わいを、エマは気に入ったようだった。
「口に合ってよかったよー!」
「初めての酒を上手いと言えるのか。エマは結構いける口なのかもしれないな。」
「ほんと、美味しいです、これ。」
エマは表情を緩ませ満足そうに言うと、再びグラスを傾けた。
「おい、調子に乗ってあんまり飲みすぎるんじゃねぇぞ。」
「なに、明日は休みだ。少しはハメを外してもいいんじゃないか。」
「そうだな。私も久しぶりに気心知れた仲間との酒だ、存分に楽しませて貰うよ。」
「ミケやエルヴィンの言う通り、今日は君が主役なんだから楽しまなきゃ!あー、そんで心配しなくても大丈夫だよリヴァイ、私達もいるんだし!」
リヴァイはつい、お前だから心配なんだぞ、と言い返しそうになったが、喉まで出かかったその言葉の上から酒を流し込んだ。
エマも楽しそうだし、まぁ今日くらいいいか…と思い直したのである。
「で、どうだ?リヴァイの下で働くのは。」
乾杯から小一時間経ったところで、隣のミケに急に話を振られたエマ。
あいつが秘書を置くなんて初めてのことだから少し興味があってな、と付け加えられた。
「兵長は分からないことは丁寧に教えてくれるし、何かといつも気遣ってくれるので安心して仕事ができてますよ!」
「ほう、評判も上々のようだな。」
「当たり前だ。俺は元々部下の面倒見はいい方だからな。」
「エマの働きぶりもなかなかのもんだと聞いてるぞ。」
「あぁ、こいつのおかげで随分と助かってる。優秀な秘書だ。」
「そんな、まだまだですよ。」
リヴァイからの評価に謙遜するエマだったが、それでもやはり褒められたのは嬉しくて、少し照れながら頬を緩める。