第7章 初めてのお味は…
「全員揃ったんならさっさと始めねぇか?」
リヴァイはモブリットが注いでくれた酒を片手に持ちながら、早くしろといった様子で本日の幹事に話しかける。
「あぁ、そうだね!じゃあちょっと遅くなっちゃったけど、エマの調査兵団入団に、乾杯ー!!」
「「「乾杯!」」」
ハンジが音頭をとると、部屋の中は明るい声と高々と持ち上げられたグラス同士がぶつかり合う音に包まれた。
「どうしたんだ、エマ?」
周りが乾杯の一杯を飲み干していく中、なみなみに酒が注がれたグラスを両手で握りしめ、それをじっと見つめるエマ。
そんな彼女に声をかけたのはモブリットだ。
「あれ?もしかしてお酒ダメだった?」
ハンジもあちゃーといった表情で彼女の様子を伺っている。
するとエマは、少し申し訳なさそうにしながら答えた。
「あ、いえ!私実はお酒飲んだことがなくって…えへへ。」
「え?!そうだったの?それは気づかずにごめん!別に無理しなくていいんだよ?なんならお茶にしておく?」
ハンジは気を利かせて何か他の飲み物をと席を立とうとしたが、エマがそれを制した。
「ハンジさん大丈夫です!!せっかくいただいたんだし、ちょっと飲んでみたいと思ってたので飲んでみます!」
「なんでも挑戦するのはいいことだな、なかなかうまい酒だぞ。」
エルヴィンもエマの言葉に乗っかると、ハンジは嬉しそうにニッと笑って手酌で注いだ二杯目を片手にエマに近寄った。
「今日からまた一歩大人に近づいたね、エマ!これもまためでたいことだ!みんな、エマの人生初の酒の席だ、もう一回乾杯しよう!」
「おい、俺は自分のペースでやっていいか?」
「何言ってんの!貴方の可愛い部下でしょリヴァイ!モブリット、リヴァイのグラスになみなみ注いでやって。」
リヴァイはまったく面倒な幹事だと言わんばかりの表情だが、大人しく空のグラスをモブリットへ差し出すと、そこへまた酒が注がれた。
何だかんだ言って、周りに合わせることもできるのだ。
「じゃ!エマの初めてのお酒に、かんぱーい!!!」