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【進撃の巨人】時をかける—【リヴァイ】

第1章  出会い



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「エマ! この間言ってたサッカー部の先輩、今度の試合でレギュラーに選ばれたんだって!」
「へぇー!それはすごいね! おめでとう!」
「でさでさ、試合が今週日曜にあるんだけどぉ……」
「うんいいよ、一緒に見に行こう!」
「さっすがエマ! ありがとう! あー、間近で先輩のかっこいいとこ見れるチャンスだぁ〜」
「フフ、澪は相変わらずだね。でもそろそろ遠くで見てるだけなのは物足りなくなってきたんじゃない?」
「そ、そんなの無理だよぉ〜! 私と先輩とじゃ釣り合わないし、私は見てるだけで幸せいっぱいなの。だからこのままでいいんだ」
「そんな呑気なこと言ってたら誰かに取られちゃうかもよ?」
「えーっそれは困る!」

 私はあの時クラスの友達の澪と下校していた。いつもの惚気話を聞きながらいつもの喫茶店の前で別れたっけ。
 その日は秋の清々しい青空に包まれて、とても気持ちがよく足取りも軽かったのを覚えている。
 このままどこか寄り道して帰ろうかな。
 なんとなくまっすぐ家に帰るのは勿体なくなってそんな事を考えながら歩いていると、目の前に猫が佇んでいたんだ。
 毛は漆黒で艶があり、ドキッとするほど鋭い目つきをしていた。
「……君は、どこから来たの?」
 そして私が恐る恐る問いかけると、猫はぷいっと横を向いて歩き出してしまったのだ。
「あっちょっと待って!」
 その時私は咄嗟に猫を追いかけた。
 単なる好奇心だったかは分からないけれど、背筋を伸ばし凛と歩く姿に吸い寄せられるように後を追ったんだ。

 狭い路地の角を曲がると草が生い茂って蔦が絡みついた古井戸の前に出た。猫はその井戸に登ると、一度だけこちらを振り返り、ひょいっと深い穴の中に飛び込んでしまったのだ。
「あっ!」
 私はその時猫が不注意で井戸に落ちてしまったと思い、急いで駆け寄って手を伸ばした。
 ——だけど。
「!?」
 それは本当に一瞬の事だった。
 猫を掴もうと井戸の中に突っ込んだ手が、中から何かに勢いよく引っ張られるような感覚があった思えば、突然身体が羽根のように浮いて暗い穴へと吸い込まれたんだ。

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