第7章 初めてのお味は…
そして夜一
「失礼します…」
今日ここに誰が来るのか聞かされていなかったエマは、少し緊張た面持ちでハンジの執務室のドアを開ける。
「おー来たきた!こっちこっち!ここに座ってよー!」
ハンジに呼ばれ部屋に足を踏み入れると、備え付けの応接ソファにエルヴィン、リヴァイ、ミケ、モブリット、そしてハンジの姿があった。
ソファだけでは数が足りなかったようでハンジとモブリットは木製のスツールに腰掛けている。
なんだかいつものハンジさんの部屋よりだいぶ綺麗だ。
モブリットさんあたりがせっせと掃除をしてくれたんだろうか?
失礼だが、何となくハンジが自分で掃除したとは思えないエマ。
そんなことを考えながら、ハンジに促されるまま席に座った。
隣にはミケだ。
ミケとは一度、仕事中にリヴァイの執務室で会ったっきりだったが、その長身で屈強そうな体つきが印象的だったためよく覚えていた。
スンスン…
「どわぁっ?!!」
ミケの隣に座った途端、彼にいきなり至近距離で臭いを嗅がれて思わず飛び上がるエマ。
「あぁ、ミケはそうやって初対面の人の臭いを嗅ぐのが癖なんだよ。エマはまだ体験してなかったんだね。」
ハンジは笑いながら簡単に説明したが、エマはそんなに変わった癖を持つ人は見たことも聞いたこともなかったため、完全に珍獣を見るような目付きでミケを見つめてしまっている。
「調査兵団は変わり者が多いと聞きましたけど…その意味が少し分かったような気がしました、ハハハ。」
「ほぼ初対面の相手になかなかの言いようだな、エマ。」
「あわわ!ごめんなさい、そういうつもりじゃなくて!」
向かいに座るエルヴィンがツッコミを入れると、慌てて否定してミケに向かって勢いよく頭を下げた。
「フッ。変に気を使われるよりそれくらいの方がこっちもやりやすい。」
「ミケは寡黙だけど、良い奴だよ。それに色々とシュールで面白い。ぜひ仲良くしてやってね!」
「あ、はい!ミケさん、改めてよろしくお願いします!」
「あぁ。よろしくな。」