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【進撃の巨人】時をかける—【リヴァイ】

第38章 “またね” ※




「戻ったら全て忘れるなんざ、そもそも俺は信じちゃいねぇが…」

「!」

頭に置かれたリヴァイの掌は、頭頂部から髪をつたい輪郭をなぞって、顎にそっと添えられた。
瞳は穏やかで、慈しむような視線をエマへと注いでいる。


「エマ。お前はこの世界に、俺の隣にこうしてちゃんと存在してる。記憶があろうとなかろうとこの事実は揺るがない。仮にもし脳みそが忘れちまったとしても、お前の肌でも指でも髪でも、どこか一部分でいい。そこが憶えているなら。」


親指が唇をなぞる。
エマは銀鼠色の瞳から片時も目を離さなかった。リヴァイも離さない。

愛と、熱を孕んだ視線が深く絡み合う。


「だから俺もできる限りの事はするつもりだ。思い出を見失わないよう、お前の心にも身体にも嫌というほど刻み込んでやる。」



“俺の存在を”



視線を絡めたままで、唇と唇が触れた。

触れるだけの優しいキスは啄むようなキスへ変わり、両手に互いの指を絡ませ合う頃には貪り合うような濃厚な口付けへと変わる。

もつれ合いながらベッドへ身を投げ、繋いだ両の手はシーツへ沈んだ。

リヴァイがエマを覆う。小柄だがやはり男の体躯をしていた。
骨ばった指は細い指にしっかり絡められ、シーツへ縫い付けられた。


どちらのものとも分からない、湿った吐息が漏れる。

何かを喋らす隙もなく、リヴァイから激しいキスの雨が降る。
エマはそれを必死に受け止めつつ、同じようにリヴァイを求めた。


言葉などない。言葉などなくていい。

一度交わった想いはとどまることを知らないどころか、後から後からさらに溢れてくる。


「んっ…はぁっ、」

エマから漏れた声を合図に、二人はより深くを求め合い始めた。


繋いだ手を解いて抱き合った。
背中に回った腕と、首に回した腕が互いの体を引き寄せて密着させ、足を絡ませ合い、重なる温度の範囲を広げていく。


「ん…服…」

「分かってる」

ペラペラの部屋着一枚でさえ煩わしかった。
二人の間を隔てるものなど早急に全部取り去って、できるだけ近くに感じていたい。

その思いは焦りとなり、脱がし合う時間さえも惜しいと、衣服は乱雑にシーツや床に脱ぎ捨てられた。


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