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【進撃の巨人】時をかける—【リヴァイ】

第38章 “またね” ※




「はいはい注目ー!ここでもう一つエマにプレゼントがあるよ!」

大きなタルトを平らげた後も酒は進み、いよいよ宴もたけなわとなってきた頃、ハンジが声を張る。
てっきりタルトがメインだと思っていたエマはまだ何かあるのかと驚いた。


「エマ、こっちへ来てくれ」

「は、はい」

モブリットに誘導され、エマはハンジと向かい合って立つ。
全員の視線が自分に注がれる緊張と、これから何が起こるか分からないドキドキ感に鼓動は早鐘を打つ。

「じゃあ、目を瞑って?」

「え?」

「いいからいいから!」

動揺するエマにハンジは何か企んでいるように笑む。
プレゼントと言っていたけれど、少し考えても何も浮かばない。エマは言われた通り黙って目を閉じた。


ふわり。何かが肩にあたる感触がした。



「よし!開けていいよ!」


ゆっくり瞼を開けて、自身の胸元に目をやる。飛び込んできたのは、深い森にそびえる樹木の葉のような翠色。

大きな漆黒の瞳はさらに大きく見開かれた。

両腕を広げれば翠色の布地が垂れ下がり、体を捻って背中を見れば、描かれていたのは自由の双翼。

紛れもなく、調査兵団の外套だ。


「ハンジさんこれ…」

「それは仲間のしるし。遠くへ行っても、エマはずっと私たちの仲間だ。」

その言葉に、見開かれた瞳孔は大きく揺れた。
ハンジは外套を纏ったエマの両肩に手を置き、穏やかに語る。


「壁の外はさ、私はとてつもなく広いんじゃないかって思ってるんだ。見たことのない景色、草花、未知の生物、食物…知らない世界が無限に広がってるんじゃないかって。この世界とエマの世界が、どこかで繋がってるんじゃないかとさえ思うほどに。
だから私たちはこれからこの外套を羽織るたび思い出すよ。あなたもきっと、同じ大地を踏みしめて生きてるってことをね。
別の世界を生きようが、私たちは仲間であり友だ。それをどうか忘れないでほしい。」


「ハンジ…さん……」


ボロボロと頬を伝い落ちる大粒の涙をそのままに、エマは情けない声を必死に紡ぐ。



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