第38章 “またね” ※
「ありがとうございます、オルオさん!とっても美味しい!」
「まぁこんなことぐらいしかできねぇが、喜んでもらえて何よりだ。」
「あー!ひっさしぶりに食べたけどやっぱオルオんところのケーキは美味しいね!絶品!」
「フルーツも美味しいわねぇ!」
人数分に切り分けられたタルトを皆思い思いに頬張った。
新鮮なフルーツはもちろん、中のカスタードクリームと生地の絶妙な甘さ加減がフルーツの自然な甘みを引き立てていて、それが美味さを助長している。
エマもしばらくぶりの本格的なケーキにテンションが上がり、味わって食べていたつもりがあっという間に皿は空になっていた。
「食うか?」
図々しくも、正直あと二切れくらいはいける、と少し物足りなく思っていたところにスッと差し出された皿。
上には三分の一ほど手をつけられたタルトが乗っかっている。
視線を上げれば若干の呆れ笑いを浮かべるリヴァイが。
「い、いいんですか?!」
「フッ。恋人には遠慮がないんだな。」
「あっ!ちが、そういうわけじゃなくて、えと嬉しさのあまりつい…」
すかさずミケに突っ込まれてたじたじするエマだが、当のリヴァイもミケに楽しそうに乗っかる。
「それだけ“まだ食べたい”と顔にはっきり書いてりゃ遠慮も無意味だろ。ほら、やる。」
「う…そんなに分かりやすいですか…?」
確か旅行の朝食の時も似たようなことがあったなと思い出しながら眉を顰めると、リヴァイに“そうだな”とはっきり肯定されたのでエマは自分で自分に苦笑いだ。
同じ人から二回も言われてしまえばきっとそうなのだろう。
ミケにも見られて恥ずかしくなったが、差し出されたタルトを断るという選択肢もエマの中にはなくて、結局皿を受け取った。
「ハハ、よく食べるのはいいことだ。私の分もいるか?」
「そんな団長まで」
「おい、てめぇの食いさしは絶対にエマにはやるな。」
隣で嬉しそうにタルトを頬張るエマがいじらしくて、ついエルヴィンも口を挟んだのだが、彼氏からしたらその発言は全くよろしくなかったらしい。
例えばペトラの食べかけなら良かったのだろうか?
“お前のは汚いから食わせるな”と言っているのも同然の辛辣なコメントに、エルヴィンは思わず失笑してしまうのだった。