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【進撃の巨人】時をかける—【リヴァイ】

第38章 “またね” ※




運び込まれたタルトが目前に置かれ、エマは目を瞠る。そしてペトラを見上げた。

「誕生日といえばやっぱりケーキでしょ?ほらエマ!火を消して?」

「えっ、あ…うん」

温かみのある赤橙色の灯りはぼんやり周囲を浮かび上がらせる。
エマを取り囲む皆は、その炎のように柔らかく微笑んでいた。

目の奥がツンとする。涙が滲んでしまいそうなのをグッと堪えて、エマは炎に息をふきかけた。


パチパチパチパチ——

「おめでとう!」「おめでと!!」


祝いの声と拍手を浴びながら、出そうになった涙をどうにか引っ込めて笑った。明かりが灯り泣きだしそうな顔がバレてしまう前に。


「ケーキまで…ありがとうございます。わぁ、美味しそう…!」

ランプに灯りが満ちて、その全容が分かるとエマは感嘆の声を上げた。

数種類のベリーとチェリー、マスカットにイチジクなど、色とりどりのフルーツがふんだんにあしらわれた大きな大きなタルト。
中心にはクッキー生地に“エマ、誕生日おめでとう”とアイシングの文字が施されている。

この世界でケーキは一度だけ食べたことがあったけれど、こんなにも豪華なものは初めて見るし、食べる。

フルーツ自体が大変高価とされるこの世の中で、これほど大きなフルーツタルトはさぞかしお高くつくのではないか…
嬉しい半面、そんなことを思ってしまった。ここまでしてもらっていいのだろうかと戸惑う。

その気持ちを察したのかハンジがニコリと笑いかけ、ペトラもそれに続いた。

「エマ、もしかして遠慮してる?大丈夫!このタルトはね、実はオルオの実家に特別オーダーして作ってもらったものなんだよ!」

「そうそう。オルオの実家はここから割と近くのケーキ屋さんなの。兵団にはよく贔屓にしてもらってるのよ。」

「! そうだったんですか…!」

「ハハハ!オルオがケーキ屋の息子だなんて意外すぎただろう?ケーキとは縁遠いような顔してるしな。」

驚嘆するエマ”を見てエルドが悪戯に笑えば、“一言余計だぞエルド!”とオルオが叫んだ。その顔はほんのり赤面している。

正直なところエマもエルドと同じことを思ってしまったのだけれど、オルオの反応を見てそれは心の中に留めておこうと思った。



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