第37章 帰還、残された時間
ハンジはどうしてもエマとリヴァイを自室に招待したいらしい。
入った途端リヴァイの掃除スイッチが入ってしまわないか心配になりながらも、エマは扉を開けるのを躊躇っている様子のハンジを見た。
「何してる。自分の部屋なんだからさっさと入りゃいいだろうが。」
「そうなんだけど…あ、エマ、もうちょい扉に近づいて。」
「こうですか?」
「そうそう!よし、これで完璧だ!…ゴホン!」
ハンジはわざとらしい咳払いをし、エマを先頭に扉の前へ立たせる。
そして自分の部屋なのにノックをするハンジにリヴァイとエマの二人が眉を顰めた次の瞬間。
パァーン!!
ドアが開き、軽快な破裂音と共にエマに向かって降り注いだのは虹色のシャワー。
「「「おめでとう!!」」」
そして祝いの言葉を発したのは、エマがよく見知ったメンバーであった。
「……」「…ぇ?」
目の前で起きた出来事に呆然と立ち尽くすエマとリヴァイの背中を、ハンジが強引に押して部屋の中へと進める。
中央のテーブルを取り囲むように並ぶソファや椅子。そこに腰掛けているのはエルヴィン、ミケ、エルド、グンタ。そしてテーブルの前にはペトラとオルオ、モブリットが立っていた。
皆が一様に温かな表情だ。そして全員の手の中には先程発射されたクラッカーがあった。
「これは一体…」
完全に置いてけぼりにされているエマの後ろでパタンとドアが閉まり、振り返ると得意気に笑うハンジと目が合った。
「今日の主役は君だ!ささ!あそこに座って!」
「エマ!こっちこっち!」
手招きをしたのはペトラだ。案内されるがまま指定の席へ座らされると、テーブルに並んだ料理に目が留まる。
何が何だか訳が分からない。
それほど大きくないテーブルに所狭しと並ぶのは、普段の食堂のメニューと違い豪勢な料理。
なぜ今日、自分が主役なのだ?というか何の主役で、どうしてこんな錚々たる面々がここに集まっているのだろうか。
いわゆる誕生日席に座らされているエマの斜め隣に座るリヴァイも、彼女と同じく疑問だらけなようだった。