第37章 帰還、残された時間
なんの前触れもなくいきなり登場して、ハッピーニュースなどと訳のわからないことを言いながらどこかへ連れ出そうとするハンジの行動は不可解極まりない。
中でもリヴァイは特に、その行動に一抹の不安を抱えているようだった。
しかしそんな二人の反応を見てハンジは豪快に笑うと、腰に両手をあててノリノリで二人に指示を飛ばすのであった。
「アハハ!うん、実にいい反応だ二人とも。いいから黙って私についてきてくれたまえ!」
「おい。ハッピーだかなんだか知らねぇがそれは本当にエマにとっていいニュースなんだろうな?」
「もーしつこいなぁリヴァイは!心配無用だって!」
「よく分からないけど、ハンジさんも楽しそうだしちょっとワクワクしません?行ってみましょうよ!」
リヴァイの心配を他所にエマもノリ気になってしまっている。
正直、というかもちろんリヴァイはエマとあのまま二人きりで過ごしたい気持ちの方が上回っていた。ハンジの言動にも不信感を拭いきれないでいたから尚更。
でも呼ばれた本人が行く気になってしまっているのなら仕方がない。人目につく場所へエマを連れ出すわけでもなさそうだし、リヴァイは渋々了承するのだった。
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目的地はハンジの言う通り本当にすぐそこだった。なんなら幹部棟にあるリヴァイの部屋から一階上がっただけの、エマにとっても馴染みのある場所。
その扉の前に着いた途端、隣を歩いていたリヴァイがグッと眉間にシワを寄せて、あぁ予想通りの反応だな、なんて思ってしまう。
「着いたよー!」
「ここ…ハンジさんの自室…ですよね?」
「正解!」
「おい…なんだってこのゴミ溜めみてぇな部屋に入らなきゃならねぇんだ。」
「ゴミ溜めって…!もっとマシな言い方あるでしょ!それに今日だけは全くゴミ溜めなんかじゃないんだから!」
リヴァイの辛辣な言葉に胸を痛める仕草をしたかと思えば、自信満々な顔で鼻を鳴らすハンジ。
失礼を承知で言わせてもらうが、ハンジの部屋はリヴァイほど衛生観念が完璧でないエマから見ても、残念ながらあまり居心地のいい場所ではない。
こっちに来たばかりの当初はよくハンジの自室に遊びに行ってはいたものの、その時から密かに心の内で思っていたことだ。