第37章 帰還、残された時間
目覚めてから5日が過ぎていた。
あれから今日までずっと、エマはリヴァイの部屋から一歩も出ていない。
三度の食事も全てこの部屋で、風呂は大浴場ではなく備え付けの浴室を使っている。
朝日を浴び花の世話をすることも、月明かりの下中庭を散歩することもない。
悪い夢は日を追うごとに見なくなっていった。
精神状態も改善されていき、それはリヴァイが献身的にエマを支え続けたおかげでもあった。
けれど、生活はまるで監獄の時と同じようなものだ。
エマ自身はあの時のような激しいストレスは感じていないようだったが、リヴァイやエルヴィンから見たらそう思えてしまう。
人権を無視した言動や辛い拷問を受けることなどもちろんないが、閉鎖された場所で誰とも会うこともなく過ごす毎日は、エマの自由を奪い去ってしまったと言える。
こんなことはしたくない——しかし彼女が“この世界で”生きながらえていくためには、最早こうするしか道は残されていなかったのだ。
「エルヴィン団長」
エマはエルヴィンが何か言う前口を開いた。
「この前はちゃんと伝えられられなかったので……その、本当にご迷惑をおかけしてすみません。…それと、ありがとうございます。」
前回…三日前にここを訪ねて来てくれた時はまだエマの精神が安定しておらず、まともに話をすることができなかった。
だからまずはちゃんと、伝えたかった。
エルヴィンを…調査兵団の皆を巻き込んでしまったことへの謝罪と、生きてここに戻るため共に知恵を絞ってくれたことへの感謝を。
「自分を責める必要はない。それに君をちゃんと守りきれなかった私にも責任は多分にある……すまなかった。とても、辛い思いをさせてしまって。」
エルヴィンの表情は曇った。
調査兵団の仲間であるエマをこんな目に遭わせてしまったのはトップの一責任であると感じていたし、そうではなくてもエルヴィンには特別な理由がある。
リヴァイ同様、エルヴィンだってエマのことはずっと、心から大切にしたいと思う人だ。
だから団長として以前に、一人の人間として、彼女を危険な目に遭わせてしまったことを酷く悔いていたのだ。