第36章 A ray of light
「リヴァイさん」
「! なんだ?」
呼び声にリヴァイはハッと我に返る。
知らないうちにエマ本人を前に考え込んでしまっていたようだ。
膝に置いた手元から目線を上げると、気まずそうな顔したエマが映った。
「あの…さっきはすみませんでした。その…手を…」
エマの視線はリヴァイの手の甲へ落とされる。先程着替えさすため服を脱がそうとした時、払い除けたことを言ってるのだと分かった。
後悔の色が滲み、悲しそうな表情。
「気にするな。色々あったんだ、少しのことで気が動転しちまうのも当たり前だし、お前は余計なことは考えなくていい。」
「でも、本当にあんなことしたくてした訳じゃなくて、リヴァイさんを拒絶する気持ちなんてこれっぽっちも」
「あぁ、分かってる。だからそんなに悲しそうな顔をするな。」
悲痛なエマの弁明はリヴァイに重くのしかかり、ズキンズキンと胸が痛むが、エマの痛みに比べたら全然マシだ。
リヴァイが団長室へ行っている間、エマはハンジにも特に何も話さなかったらしい。
彼女の性格上、辛くてもこれ以上周りに迷惑を掛けたくないなどと思って自制しているのだろう。
しかしそんなこと、恋人である自分にはしてほしくない。
自分には全てをさらけ出してほしい。何を言われてもされても全部受け止める気でいるし、そのためなら傷ついたって構わない。だから…
「エマ。お前が幽閉されていた時の話はエルヴィンから全て聞いた。」
「っ?!」
エマをまっすぐ見据えて告白すれば、その大きな瞳は愕然とした色を纏った。
そして、震える唇から恐る恐る紡がれる言葉。
「全て…って、本当に全部、何から何まで…?」
「あぁ、そうだ。アイツは黙っていたが、俺が知りたくて聞いた。だからさっき俺を拒絶した理由も大体分かってる。」
「っ……」
エマは口に手を当て、ショックを隠しきれない様子だった。
無理もない。エマからしたら特にアデルのことは、ましてや恋人になんて絶対に知られたくない事実。
けれど、このままではエマは一人苦しむばかり。
リヴァイは少しでもエマの心に寄り添い、彼女の抱える苦しみをできる限り受け止めてやりたかった。
だから敢えて、包み隠さず話したのだ。