第36章 A ray of light
やはり喉は相当乾いていたのだろう、一度口をつければたちまちゴクゴクと喉を鳴らし、リヴァイの注いだ水はあっという間に空になった。
「…リヴァイさん、ありがとうございます」
「次は着替えだ。脱がしてやるからこっちを向け」
「そっそれは自分で…」
「ダメだ。見た目は分からなくてもお前はまだ本調子じゃねぇんだ。」
「でもそんないきなりは」
「今更恥ずかしいとでもいいたいのか?」
散々自分の前で裸を晒してきたというのに、今更恥ずかしがる必要があるのかとリヴァイは眉根を寄せる。
今のリヴァイに別にやましい気持ちはないし、この発言はエマの身体を気遣ってのこと。それに本当に早く着替えないと風邪を引いてしまうから、つべこべ言わず従ってほしいだけなのだ。
「いいから言うことを聞け。」
うじうじ言っているエマを一蹴し、リヴァイは服を捲ろうと手を腰のあたりに伸ばすが、
「ッ!!」
パシッ—
「?!」
その手は何故か、エマに勢いよく振り払われてしまった。
「……ぁ…ご、ごめ、なさ…」
思いもよらぬ展開にリヴァイの動きは止まってしまった。
震える声で謝罪が呟かれる。目を見開いたままエマの顔を見れば、怯えた瞳がこちらを見つめていた。
「どうした…?」
「ごめんなさい……こんな、つもりじゃ…ごめ、なさ」
瞳は小さく揺れている。自分で自分が取った行動にショックを受けているような、そんな感じだ。
「おいどうした?何か不安事があるなら話してみろ。」
「ちが……違、う…終わった…のに…なんで」
リヴァイが促すもエマの意識は遠く彼方にあるような感じで、支離滅裂なことを言っている。
逸れた目線は再びリヴァイを捉えることはなく、シーツのあたりに落とされていた。
「エマ」
「ゃ…やだ!来ないで、来ないで……!」
リヴァイがもう一度伸ばそうとした手から逃げるようにして、エマはベッドのヘッドボードへ背を押しつける。そして、
「やめて……もう、ぃゃ…いやぁ!!」
耳を塞ぎ目を固く閉じ、視覚も聴覚もシャットアウトさせたエマから発せられたのは強い拒絶だった。