第36章 A ray of light
——!!!
バッと瞼を開け、飛び込んできたのは茶色の天井。
その次に意識は自分へ向かった。
「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ」
肺は溺れたあとのように激しい呼吸を繰り返していて、ぐっしょり濡れた背中が気持ち悪い。
「エマ…?」
少し離れたところで声がして、エマが首を動かすよりも先にその声の主がエマの顔を覗き込んだ。
「起きたのか?!」
「………リ、ヴァイさん…?」
エマはゆっくり目を見開いていく。
まだ霞む視界に映るのは、慌てたような顔。驚くエマを覗き込むのは、リヴァイだった。
「体は、おかしいところはないか?」
「……え、と」
まだ少し呼吸も乱れているし頭もぼうっとするけれど、特に痛いとか苦しいことはない。
エマはとりあえず異常はなさそうだと伝えた。
「だ、いじょうぶです…あの」
「まだ動くな。ちょっとじっとしてろ」
「あ、はい…」
上体を起こそうとしたが両肩を押されエマは再びスプリングに体を沈める。
横になって辺りを見回した。見慣れた家具やよく知る匂い。どういうわけか自分はリヴァイの部屋のベッドの上にいるらしかった。
リヴァイがタオルでエマの額や首に滲んだ汗を拭いていく。温かく湿り気を帯びた布が肌に当たると、心地良い安心感に包まれた。
「あの、すみません、からだ…」
「ずっと起きなかったから心配した。」
「え……?」
「“あの日”、壁内へ戻る途中でお前は気を失い、今日まで三日間眠り続けてた。」
「!!」
体を拭きながら話すリヴァイは少し疲れたように見える。目の下の隈もいつもより濃い気がして、エマは悟った。
「私…そんなにずっと……」
壁外で急に意識を失い丸三日も眠ったままだったのならば、リヴァイの心痛は相当なものだったに違いない。
しかも三日間ここに寝ている間、おそらく彼がずっと看てくれていたのだろう…
「リヴァイさん、ごめんなさい…」
エマはリヴァイにひどく苦労を掛けたと思い、謝罪した。
しかしリヴァイからは“馬鹿野郎”と、なぜか辛辣な言葉を投げつけられ、エマはポカンとしてしまう。