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【進撃の巨人】時をかける—【リヴァイ】

第36章 A ray of light




エマは空を飛んでいた。

何もかも終わったと、巨人に喰い殺される道しか残されていないと悟ったエマに差した一筋の光は、彼女を力強く優しく包み込み、絶望の淵から救い出してくれたのだ。

しかし突然の、あまりに出来すぎた展開に思考は全然追いつかなくて、幻なのかと錯覚しそうになる。

けれど抱かれる腕の強さも、密着する身体の温度も間違いなく本物で、やはりこれは幻なんかじゃないと、そう気づかされるのだった。



「全員廃村に迎え! 平地での戦闘は極力避けろ!」

「「「はっ!!」」」

横抱きに抱えられたエマは、部下に指示を飛ばすリヴァイの声を聞きながらまだ半分夢心地のような気で、眼下に先程の巨人を見た。

断末魔の叫びを上げ崩れた巨体は地面に倒れ、シュウウウと白い蒸気を放っている。

……死んだ、の?


「あの巨人は殺したから心配ない。それよりしっかり掴まってろ。残りの奴らをこのまま村まで誘導して、そこで叩く!」

エマを見据える双眸は静かに、しかし雄々しく燃ゆる炎を宿していた。
リヴァイのこんな目を見るのは初めてで、エマはその真剣な表情を見て漸く頭の理解が追いついた。

巨人を前にしてしまえば、事態は一刻の猶予も許されないのだ。


「はい!」

エマは自身を奮い立たせると精一杯返事をしてリヴァイのシャツの胸元を掴むと、リヴァイもエマの身をさらに引き寄せてしっかりホールドし、彼女を見下ろした。

その時ほんの一瞬だけ、戦闘中の兵士の顔つきが緩む。
“無事で良かった”と心底安堵する声が聞こえそうな、そんな表情で見下ろすリヴァイに、不謹慎にもエマの胸はドキンと鳴ってしまった。

がしかし、



「オ゛ア゛アアアア!!」

心臓まで響き渡るような咆哮と、大地を踏み鳴らす足音はまだ聞こえていた。

リヴァイの肩越しに後ろを見やると、自分達を捕食しようとギラついた目をして追いかけてくるヤツらが、ざっと見て10体ほど。
リヴァイの言うと通り、まだほとんど付近の巨人は始末されていないようだ。

束になって向かってくるその悍ましさにエマは再び恐怖に飲まれそうになったが、それを察したかのようにリヴァイの腕が強く抱きしめてくれたおかげで、何とか精神を落ち着かせたままでいられた。


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