第6章 秘書のお仕事
「あっ大丈夫なんです!ちょっと不快感があるだけというか、全然仕事は出来るくらいなので!」
「…そうか。辛くなったらすぐに言うんだぞ。」
「はい、ありがとうございます!」
あくまで大丈夫と言い張るエマを後目に、リヴァイは気遣いの言葉をかけて自分の机に戻り仕事を再開した。
咄嗟に思いついためちゃくちゃな理由だったが、どうやら納得してくれたようだ。
嘘をついてしまったのは心苦しいけれど、やはり彼には本当のことを言う気にはなれなかった。
それからはエマもなんとか気持ちを切り替えて仕事に精を出し、無事昨日の見立て通り、膨大な書類の山は午前中で全て片付いた。
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その後昼食を挟んで、午後からは幹部会議があった。
「あれ?エマは連れてきてないの?」
一人で会議室の椅子に座るリヴァイを見つけたハンジが問いかける。
「クソでも溜まってんのか腹の調子が悪いみたいだから休ませた。」
「あらー!少し頑張り過ぎちゃったのかな?」
「…ハンジ、あいつに何か変わったことはなかったか?」
リヴァイは心配するハンジに目線をやりながら問いかけた。
「え?昨日の夜は私の部屋で話をしていて、普通だったよ?今朝は会ってないけど、昼は元気そうだった。食事も完食してたし、お腹痛そうには見えなかったけどなー。」
「そうか。」
エマとよく一緒にいるハンジなら何か知っているかもしれないと思ったが、どうやらこいつは何も知らないみたいだ。
昨日、兵舎の門で会った時はおかしな様子は見られなかったし、昨夜もハンジの部屋でいつも通りというなら、何かあったのは今朝…か?
リヴァイはエマが嘘をついていることにはとっくに気付いていたのだ。
昨日まであれだけ仕事に集中出来ていたのに、さっき自分が声をかけるまで、一点を見つめぼーっとしてまるで上の空で、おかしいことにはすぐに気がついた。
あれはどう見ても、お腹が痛いなんて顔ではない。
今朝、何があった?
エマの変化の原因が気になって仕方がなかった。
なぜなら、もしかしたらある人物のせいで様子がおかしくなったのでは、という予感が働いていたからである。