第6章 秘書のお仕事
「…おい、どうした?この二日間飛ばし過ぎたせいでゴール目前にエンジン切れか?」
「いっいえ!すみません、少しぼーっとしちゃって。」
執務机から心配そうな視線を向けるリヴァイに、エマはハッとして謝った。
「調子悪いのか?昨日までと比べて顔色もあまり良くないようだが。」
「いえ、大丈夫です!今日は天気があまりよくないので顔も暗く見えるんじゃないんでしょうかね?」
リヴァイがもう一度尋ねるが、エマは至って健気に振舞った。
いや……本当はあまり大丈夫ではない。
仕事をしながらも、今朝の出来事をふと思い出しては胸の奥がざわついていたのだ。
早朝は晴れていたのに、気が付くと空は厚い雲に覆われていて、まるでエマの心の移り変りを表しているようであった。
「仕事をする上で報連相は大事だと教えたが、それにはお前自身の体調のことも含まれていることを忘れるな。体の具合もそうだが、気持ちの方もだ。…何かあったのか?」
その言葉にエマは見つめていた書類から顔を上げると、リヴァイはいつの間にか彼女が座る机に両手をついて鋭い三白眼をこちらへ向けていた。
….ダメだ。
この人には隠し事が出来そうにない。
でも、兵長に団長のことを正直に話すことはできない…なんとなく。
なぜだか分からなかったが、話すことはできないと言うよりリヴァイには話したくないと思ったのが正しいと思う。
「俺には言い難いことか?」
「え、えと実はですね…その」
どうしよう、なんて言おう…
リヴァイは相変わらずこちらを見つめている。
「お、お腹の調子があまりよくなくて…」
…もっとマシな嘘は付けなかったのか。
「…なんだ。そんなことなら我慢せずにすぐに言え。しばらく横になるか?もしキツイようならもう今日は上がって休んでもいい。お前が頑張ってくれたおかげで、後は俺一人でも何とかなりそうだしな。」
予想外の理由だったのかリヴァイは一瞬目を丸くしたが、すぐに表情を戻すと冷静にエマの体を気遣った。