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【進撃の巨人】時をかける—【リヴァイ】

第35章 届かぬ掌 ※




一一一一一一一一一一一一一一一


暗く、深い黒が包む新月の夜。
壁内で一番見晴らしのいいここから、どこに地平線があるのかも分からないほどの漆黒の闇を見据えていた。


「兵長、まだ動きはないようです。」

「そうか…引き続きグンタと監視を頼む。話じゃ日の出までには必ずここへ来るはずだからな。」

振り返り、自分よりも頭一つ分背の高いエルドは兵服ではない。そしてリヴァイも。
しかし双方とも、腰にはしっかりと立体機動装置を装着している。

“了解しました!”と敬礼し持ち場へ戻るエルドの背中を見送った後、リヴァイはポケットから懐中時計を取り出し時刻を確認した。

少し前に日付が代わり、あと数時間でエマが憲兵に連れ去られてから8日目の朝を迎えようとしていた——




**


「これを……」

今から2日前の朝、突然執務室を訪れたナイルから渡されたのは、クシャクシャになった紙切れ。視線を落とすと、小さな紙いっぱいにびっしりと書き連ねられた文字が。

線が震えて歪なそれは時折文字同士が重なったりしているが、なんとか理解できる。そしてこの筆跡は間違いなく、自分のよく知る男のもの。
過酷な状況下でどうにか文字を綴ったことが伺い知れた。


「…エルヴィンに会ったのか」

「あぁ、昨日。職権を駆使して、なんとかな」

そう言うナイルの顔は少しも晴れない。ショックを受けているようにさえ見え、その表情を見れば嫌でもあっちの状況を計り知ることが出来てしまいそうだ。

リヴァイは言い知れぬ焦燥を抑えながら、懸命に綴られたエルヴィンからのメッセージに目を向けた。


“エマの処罰に関する情報——”

最初の一言で眉間にグッと皺が寄る。そして読み進めるにつれ、どんどん皺は深く刻み込まれる。


——〇月✕日。私が連行されて2日目、エマが失踪して4日目。エマと例の作戦を共有したのち、彼女は憲兵に真実を語った。
そしてそれと同時に、彼女はその身を挺し、作戦に必要な情報を憲兵から聞き出してくれた。

情報によると彼女は〇月△日の深夜、トロスト区外門横の通用口より、壁外へ追放される——


そこまで読んだところで羅列する文字はぐらりと揺れ、身体中の血液は首から上に集まっていた。

「……チッ!!」

グシャ、と紙を丸めた手は小刻みに震えている。


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