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【進撃の巨人】時をかける—【リヴァイ】

第34章 失踪




「…まぁいいや。話を戻しましょう。
これは一体なんなんですか?」


目の前にちらつかされる黒く薄い四角の物体。
薄笑いの男を滲んだ視界に映し、エマは口を噤んだ。


「………」

「答えてくださいよ。」

「………」

固く引き結んで閉じる。
まだ涙は流れてしまう。けれど決して男から視線を逸らさない。


……簡単に屈してたまるか。


襲いくる絶望を払い除け、精一杯抗おうと、エマは強い目で見据えた。




一一一一一一一一一一一一一一一


「結局見つからないですね…」

「一晩探しても見つからないということは、兵団の外へ行ったのが濃厚か…」


エマが連れ去られた翌朝の団長室には、エルヴィンとリヴァイ、ハンジ、モブリット、ミケが揃っていた。

爽やかとはとても呼べない朝。
部屋の空気はどんよりとし、加えてその一角はピリついている。


「ねぇ、そのリリーって子からは男の特徴とかは聞けなかったの?例えば服装とか髪型とか。」

これでもかというほど深く眉間に溝をつくり、目の前のテーブルをその眼光で灼き切りそうな勢いで睨む男にハンジは問いかけた。


「…何も」

「そっかぁ……あ、あのさリヴァイ?心配なのは分かるけど、もうちょっと冷静になろうよ。」

気遣わしげに見やるハンジを一暼し、リヴァイは漸く重たい口を開いた。


「…わざわざ兵団まで来たんだ。兵団の外の連中だったとしても、エマと繋がりのあった奴か、アイツを知る人物なのは間違いないだろう。無差別にとは考えにくい。」

「しかも雰囲気からして、エマも知っている人物な気がするんだが。」

ミケがスンと鼻を鳴らすと一同が頷く。
リヴァイが眉間に深く皺を蓄えたまま、もう一度思い当たる人物を一から思い出そうとしていた時だ。


「心当たりのある人物がいる。」

窓辺に立つ背中が振り向き、落ち着いた声がはっきりとそう言った。


「誰だ、エルヴィン。」

一同の視線が窓辺に集まる。緊張した空気が流れた。
しかしエルヴィンの口が動くのと、その空気が引き裂かれるのはほぼ同時であった。


「エルヴィン団長!連絡事項が一件、早馬で届いております!」


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