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【進撃の巨人】時をかける—【リヴァイ】

第34章 失踪




「この任務を成功させたら、特別に憲兵に入団させてくれると聞けば、やらない訳はないでしょう。俺の夢のために一役買ってくれてありがとうございます。
しかし調査兵団も夜中の警備くらい雇えばいいのに…思いの外簡単に忍びこめて吃驚しましたよ。」

アデルは皮肉な笑みを浮かべながらエマの頬へ手をかけた。

「あぁでも、万年人手不足の調査兵団にはそんな余裕ないか。」

「…っそんな風に言わないで!!」


エマは頭を振って手を払い除け、睨みつけた。

ほんの少しの間だけでも一度は調査兵団の人間だったというのに、なぜそんな言葉が出るのか。

しかしそんなエマの気持ちなど知って知らずか、アデルはエマを哀れなものを見るかのような目で見下ろす。


「壁外調査で毎回どれだけ皆が死に物狂いで戦ってるのか…あなたもそれくらい分かるでしょ?!」

「分かるからこそこっち(憲兵)に来れて心底良かったって思ってる。調査兵団も馬鹿だよなぁ…巨人なんか勝てっこないのに、何年も無駄な犠牲を積んで。本当、人類のために簡単に命を捨てて、おかしな奴らだよ。」

「簡単に捨ててない!!!」

叫んだ唇はわなないていた。頭に血が上り、激しい怒りで震える。


兵士の皆がどんな思いで壁の外へ行くのか…
たった数ヶ月しか生活を共にしていないが、その気持ちぐらいは想像できる。だから許せなかった。


「…随分と熱心なんですね、ただの秘書なのに。尊敬しますよ。」

“尊敬する”と言ったのに少しもそんなことを思っていないような顔。

「歓迎会の時に…エルヴィン団長に敬礼したのも…全部、嘘だったの…?」


裏切り。谷底へ突き落とされたような深い落胆。

酷いことをされたけれど、それでも彼を信じようとしていた自分。そんな自分が滑稽にさえ思えてくる。


「言ったじゃないですか。俺は憲兵に入りたかった。だから調査兵団のことなんて全部どうでもよかったんですよ。」

「……………っ」

「…何泣いてるんですか。」


涙が、両目から溢れてぽたぽたと床に落ちる。

どれもこれも、彼には少しも響いてなんかいなかった。少しでも信じようとした私が馬鹿だったのか。

悔しくてやるせなくて、そんな感情が全て透明な雫へと変わる。


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