第34章 失踪
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「チッ!」
向こうから走ってくるグンタの顔を見て、リヴァイは益々厳しい顔つきになった。
建物内も外もくまなく探した。西に聳える山はもう太陽を半分ほど隠していて、東の空は群青に染まりつつある。
リリーはペトラに家まで送ってもらっている。
……いない
エマがどこにもいない
どこへ行きやがった…
焦りが募る。
齢三つほどの子供に状況を聞くには限界があった。
結局分かったのは、エマが誰か(男)に呼ばれてリリーの元を離れ、その後複数人の男とどこかへ行ってしまった、ということだけ。
時間は推測だが午後2時~3時半の間か。
今朝エマに頼んだ仕事はエマのペースなら昼過ぎには終わる。それから花壇へ行き、あのリリーという子供と会ったのだろう。
そして自分たちが訓練を終えて花壇の前を通ったのが大体4時頃。
エマがいなくなってからリリーは随分一人で待っていたという話だから、大体上記の時間帯に来訪者が来たと見ていいだろう。
「兵長…俺のところもいませんでした…」
「グンタ、ご苦労だった。」
「エマ、一体どこへ行ったんだ…」
「もしかして旧友が訪ねてきて、街でお茶でもしてフラッと帰ってきたりとか…」
「いやオルオ、それは違う。なぜなら、……いやなんでもねぇ。」
「?そうなんすか?」
エマは調査兵団の連中以外に知り合いはいない、と言いかけた口を噤む。オルオ達はエマが異世界から来たことを知らない。
「捜索は一旦止めだ。協力助かった。後はこっちでどうにかするからお前らは飯にいけ。」
「「了解です…!」」
リヴァイは部下たちに礼を伝えると一人幹部棟へ向かった。
道中目を凝らして探すがやはり人影はない。
今頃食堂で飯でも食っていないかと思いたいが、やはりそんな可能性はないだろうと考えてしまう。
どうしても嫌な予感が拭えない。
「チッ!クソ!!」
辺りを闇が飲み込み、自室へつく頃には完全に夜に包まれていた。
朝と何ひとつ変化のない部屋を見て盛大な舌打ちが出てしまう。
誰が?何故、エマを?
今日は兵士総出の一斉訓練だったから兵士ではない。
兵舎に残っていたのは常駐医と給仕の女性スタッフのみだ。
ならやはり外の人間か一