第34章 失踪
リヴァイは奔走していた。
広い兵舎だが、5人で手分けすれば1時間ほどで隅々まで回れる。
「兵長!」
「オルオ!いたか?!」
「いや…こっちには…」
「兵長!こっちも見当たりません!」
続々と寄せられる報告に、リヴァイの顔は険しくなっていく一方だ。
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「おねぇちゃんが、帰ってこないの」
リリーといった少女は弱々しく呟き、その場にいた全員が困惑しながら視線を交わす。
「おねぇちゃんっていうのは、貴女のおねぇちゃん?ここではぐれちゃったのかな?」
不安そうな少女を宥めるように問いかけたのはペトラだ。しかしリリーははっきり首を横に振った。
「おねぇちゃんとお話してたの。そしたらおにいちゃんがきて、ここで待っててねっていわれて、待ってたけど、いっぱいのおにいちゃん達とどっか行っちゃった…」
少女の周りには青々とした雑草が散乱している。
ここ、というのは花壇だ。そう、エマが大事に世話をしている、花壇。
リヴァイの中で妙な胸騒ぎが起こった。
気持ちをどうにか落ち着かせながら、リリーへ冷静に問う。
「その姉ちゃんの名前は分かるか?」
「………エマおねぇちゃん」
「「「!!」」」
彼女の口から出た名前にリヴァイの瞳は鋭く細まった。他の4人は唖然としている。
「もう随分戻ってきていないのか?」
大人たちの雰囲気の変化に気がついたのか、頷いたリリーは不安な色を強めた。
「………」
…ペトラが横でリリーに何か言っている。しかし内容はまるで入ってこない。頭にあるのは少女の話と、エマのことだけ。
誰と、どこへ行きやがった…?
言いようのない胸騒ぎと焦燥感が、リヴァイをつき動かした。
「お前ら、作戦会議は中止だ。今からエマを手分けして探す。」
「え?!でも兵長、もしかしたら誰かに呼ばれて用事してるだけかも…」
「いやそれは考えにくい。アイツが関わりそうな人間は今もずっと全員揃って訓練場だ。それに………とてつもなく匂う。」
「に、匂うって」
「俺の勘だ。とにかくさっさと手分けして探すぞ!日没前に見つけ出さなきゃマズいことになる。」
半信半疑なオルオを一蹴し、リヴァイは部下達に命令した。