第33章 決意の裏側
リヴァイに連れられやってきたのは中庭。
ベンチへ腰を掛ければ、そよそよと吹く涼しい風が肌をなぞり毛先を揺らす。
ここへ並んで座るのがなんだかすごく懐かしく感じた。
「今日は新月だから星がよく見えるな。」
「わ、ほんとだ…」
確か前にも同じようなことをリヴァイは言っていたとエマは思い出す。
まだ二人が付き合う前の、寒い寒い冬の夜のことだ。
頭上には宝石が散りばめられたような煌めきが視界いっぱいに広がり、エマの心は不思議と軽くなっていく。
「リヴァイさんって星眺めるの好きなんですか?」
エマが何気なしに問うと、“は?”とリヴァイにしては素っ頓狂な声が飛んできたので、おかしくて思わずエマは笑ってしまった。
「フフ、だって前も今みたいに嬉しそうに同じようなこと言ってたし、好きなのかなーって。」
「…嬉しそうに見えるのか?」
「はい、とっても」
自信ありげな笑みを見せるエマに対してリヴァイは怪訝な顔だ。
確かに静かに瞬く星を見ると心が落ち着くし、ぼうっと眺めるのは嫌いじゃないが、まさかそんなに嬉しそうな顔をしているだなんて。
まるでロマンチストみたいじゃないかとむず痒くなってしまう。
「リヴァイさんって、意外とロマンチストですよね!」
たった今考えていたことをエマに言われたリヴァイはぎょっとしたが、なるべく平然を装う。
「意外とってなんだよ…」
「あ、すみません!こないだ見せてくれた桜の景色もすごくロマンチックだったし、そういうの好きなのかなって。」
しかし横で口元に手をあて微笑むエマを見たら、別になんと言われてもいいかという気になった。
そんなことよりも今は、
「漸く戻ったな。」
「え?」
「顔。昨日からずっとひでぇ顔してただろ。」
昨日塞がれた井戸を見てからというもの、エマはずっと暗い顔をしていたのにリヴァイはもちろん気付いていた。
「気分転換だ。お前は何かあるとすぐああでもないこうでもないと考えすぎるだろう。まぁ今回は考えなきゃいけねぇ話だったが…だが過剰に悩みすぎるのもよくない。」
「リヴァイさん…」
エマは驚き申し訳なさそうにしたが、でもすぐに頬を緩めた。