第33章 決意の裏側
「大丈夫…っていうのはちょっとだけ嘘です。やっぱりこの先、辛くなっちゃうかもしれない…」
ソファに並び、エマは膝に置いた拳をキュと握ってリヴァイを見た。
「だから、その…リヴァイさんにきっと迷惑を掛けます。だけど、時間がかかってもいつかきっと、乗り越えるから…」
苦しくてどうしようもなくなった時は、少しでいいから頼らせてほしい。
「この先記憶を失くしていったとしても、少しずつ受け入れるから…」
ポン、と頭の上に手が乗る。エマがよく知る優しい重みで、たったそれだけなのに安堵が拡がっていく。
「昨日も言っただろう、お前の苦しみはできる限り俺も一緒に背負うと。だからそれでいい。完璧である必要なんてねぇよ。」
「リヴァイさん……」
「前も言ったが俺は今のありのままのお前だからいいんだ。だから心のまま胸張って生きろ。お前自身と、お前の幸せは俺が全力で守る。」
こちらをじっと見据える銀鼠色の瞳が瞬く間に滲んでいく。
今日は泣かないと決めたはずなのに、そんなことを言われてしまってはやはり堪えることなんてできない。
必死に奥歯を噛み締めたが、結局 零れる滴を止めることは出来なかった。
「迷惑、掛けても…?」
「馬鹿野郎。迷惑だなんて思わねぇし、今までだって一度も思ったことねぇよ。」
「ほんとに…?」
「本当だ。だから安心しろ。」
濡れた頬を拭う指は男らしく骨ばっているがとても繊細だ。たった指先だけでも、リヴァイが触れてくれるだけで本当に安心する。
涙を拭われながらエマは自重気味に笑って見せた。
「あぁ、もう…今日は絶対泣かないって思ってたのに。」
「ここには俺しかいないし別にいいだろう。」
「そういう意味じゃないんです。すぐ泣く自分が嫌だっていうか…へっぽこだなぁって」
「なんだっていいじゃねぇか。まぁだが…男として大事な女を泣かせてばっかりってのはいただけねぇ。」
「ご、ごめんなさい…」
「お前が謝ることじゃない」
リヴァイは困ったように眉を寄せる。そしてふと、何かを思いついたような顔した。
「エマ、外へ出るぞ。」
「え?」