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【進撃の巨人】時をかける—【リヴァイ】

第33章 決意の裏側




「…覚悟…しきれてないんだろ…本当は。」

黒い瞳が大きく見開かれ、揺れる。


「そんなことは…」

「気付いてた」

「え?」

「お前がずっと、本当は決意を躊躇ってるのは分かってた。」

「………違いま」
「隠すな。それに無理に思い込もうとしなくていい。」

「……」

包んだ拳の震えが大きくなり、唇も僅かに震え出す。
自分より小さな体がさらに小さく見えた。


「前に、お前が決意を聞かせてくれた時は黙って頷いたが、別に迷いながらでもいいと思っていた。俺の傍にいてくれるうちはお前を全力で幸せにする。そう思って今までやってきたつもりだ。」

「……」

「大切な故郷とその思い出を全て捨てるなんて、そう簡単に決心できることじゃないことくらい俺にだって分かる。」

「……っ」

ポロ、と瞳から綺麗な雫が伝い落ちた。
声も出さず咽び泣く姿を見て、リヴァイの心はズキンと痛んだ。


後戻りの道は塞がれた。
これで本当に本当の意味で、エマは大切な両親や友人、過去の思い出達と決別しなければならなくなった。

エマは後悔しているのではないか。
一度故郷に戻れたあの時、やはりあのまま留まるべきだったのではないか。
自分とは別れて、本来の場所で生きるべきだったのではないか…


彼女の意志を尊重したとはいえ、連れてきてしまった自分にも責任がある。
あの時の選択は間違っていたのではないかと、次から次へと零れる涙を見ているとそう思ってしまいそうだ。

どんな言葉をかけてやればいいのかも、抱きしめてやっていいのかも分からない。
握り締めた拳を包む手に力を込めることぐらいしか、出来ない。

何も無い土の上で立ち尽くしたまま、ただ時間だけが過ぎていく。



**



覚悟していたつもりだった。
でもそれは本当に“つもり”だったのかもしれない。

ふとした時に両親や友達、故郷の景色を思い出し続けていたのは、心のどこかで“失いたくなかった”からだったのかと気づく。
帰ることができなくなって、こんなに涙が出てしまうのはきっとそういうことなんだと。

そしてそれを、覚悟を誓ったはずの人の前で簡単に晒してしまった。
苦しい顔をさせてしまった、リヴァイさんに。

なんて中途半端で意志が弱いのだろう。
いや、これじゃあ意志が弱いどころか嘘つきじゃないか。

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