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【進撃の巨人】時をかける—【リヴァイ】

第33章 決意の裏側




リヴァイは徐に自分の羽織っていた上着をバサリとエマの肩にかけた。

「これで少しはマシになるだろう。」

「…へ?」

「それ羽織って目隠しにしておけ。」

ポカンとするエマの腕に袖を通し、ボタンを上まで閉めてやる。少し大きいが首元が詰まったデザインなので鎖骨は無事隠れた。


「あ、ありがとうございます…はっ!でもこれだとリヴァイさんが寒くないですか?!」

エマは有り難いと思ったが、ここは北の地。
兵舎よりも体感で気温は5度ぐらい低い上にまだ朝で肌寒い。いくら強靱なリヴァイでも心配になってしまう。


「俺はいい。」

「え、でも…」

「ごちゃごちゃうるせぇな。言うこと聞いとかねぇとまた見えるところに増やすぞ。」

「それは!!」

「なら黙って羽織っとけ。」

颯爽と馬に乗ったリヴァイの手を取り、エマもその後ろへ腰を下ろす。


「キスマークの件は…これからはなるべく善処してやる…」

「お、お願いします…よ?」

心許ない返事に少し怪訝になったが、大きめの上着から香る清潔な石鹸とリヴァイの匂いに包まれれば、たちまちエマは安心してしまった。


「跡消えるまで、これ借りててもいいですか?」

両腕を腹に回して背中に寄りかかるとリヴァイの香りは益々強くなって、エマの胸を甘く焦がす。

「ハッ、兵舎でそんなの羽織ってりゃ余計目立つだろうが」

「あ、そっかぁ…」




「おーいあんたたち!」

その時玄関の方から呼び止める声がした。
そちらを向くと紙袋を抱えた奥さんと、その後ろからご主人も小走りで近づいてくる。


「おばさま…!」

「これ!」

突然渡された紙袋。ほんのり温かくて香ばしい匂いを漂わせている。

「え、これ…」

「持って帰りな!心ばかりの感謝の気持ちだ。」

「またぜひいらしてください。いつでもお待ちしてますから。」

相変わらず歯を見せ豪快に笑う奥さんと、その横で眉を下げ優しく微笑むご主人。

エマは二人のはからいに胸がいっぱいになり満面の笑みを溢した。

「ありがとうございます!また必ず!」

「世話になったな。」


リヴァイの脚が発進の合図を出すと、イーグルはゆっくり前進しだす。
エマはすぐ振り返り、二人の姿が見えなくなるまでずっと見つめていた。

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