第33章 決意の裏側
外へ出るとイーグルを引き連れたリヴァイが戻ってきていた。
「待たせたな」
リヴァイはエマが抱えていた荷物をすぐに持ち上げイーグルに乗せようとしたが、そこでエマの様子がおかしいことに気が付く。
「どうした?調子悪いか?」
リヴァイと目を合わせようとしないエマは顔を伏せたまま首を横に振る。
「おい、こっち向けよ」
心配になって荷物を片手に持ち替え、優しくエマの顎に手を掛けると、茹で蛸のように顔を赤くして困ったような、怒ったような顔がこっちを向いた。
「もう…リヴァイさんっ!」
声色はやはり少し怒っているように感じて、リヴァイは何事かと目を見開く。
「オイオイ、一体何があった?」
自分がいない間にエマが機嫌を損ねてしまっている。普段あまり怒ったりしないから、リヴァイは内心少し焦った。
黙って伏せるエマに二、三度問い質すと、漸くその重い口を開いてくれた。
しかしその内容を聞くと、リヴァイはそんなことかとホッと胸を撫で下ろしたのと同時に、エマには申し訳ないと思いつつ笑ってしまったのだった。
「どうしてくれるんですかぁ…!」
リヴァイはいっぱいいっぱいで泣きそうなエマの鎖骨上にそっと指先を置いて、余裕そうな笑みを浮かべた。
「別にいいじゃねぇか、キスマークの一つくらい他人に見られたって。」
エマの様子がおかしかった理由は、昨夜リヴァイがつけた印がここの奥さんにバレてしまったからだった。
聞けばさっき外へ出る前、“彼があんたのこと愛してる証、確かに見させてもらった”と襟元を見て耳打ちされ、そこで初めて気が付いたらしい。
丸く開いた襟から見え隠れする、朱に色付けられた肌。
それは他の誰でもないリヴァイがつけた愛の証である。
「無理です…恥ずかし過ぎて死にそう…」
目を潤ませ耳まで真っ赤にしているエマ。
こんな姿を見たら今すぐ抱き寄せて口を塞いでしまいたくなるが、今そんなことをしたら本当に怒らすことになりかねないなとリヴァイは心の中で苦笑した。